思考を超える鍵

「好きなんだ、お前が」

少女の目の前に立つ少年は、病的なまでに色素の薄い肌を真っ赤にして少女を見下ろしている。
一瞬手の甲を口にあて言葉を止めたが、真っ直ぐ彼女を見つめる彼の空色の瞳からは、少女への滾るような想いが伝播してくるようで。
少女は、その想いの熱量を推し量れないでいた。

「あなた、自分が何を言っているか分かっているの?わたしはマグルなのよ、あなたの嫌いな。おまけにグリフィンドール生。ちゃんと整理してから口にしないと、言葉というものは誤解を生んでしまうのよ」

いつも聡明で他人の気持ちを感じ取る力に長けている少女だが、ありもしないし考えもしなかった少年が吐く言葉に、彼の気がおかしくなったとでも言うような口調である。

「僕は自分の気持ちをお前に率直に伝えただけだ。僕はお前のことが好きだ」

「ちょっと本当に待って。頭がついて行かないわ。わたしのことが好き?何故?あなたはマグル嫌いの純血主義でスリザリンで、わたしたちを良く思っていない。入学してからずっとよ。それなのにわたしを好き?どういう風の吹き回し?他の純血主義者はマグルのこと毛嫌いしているし、あなたの思考の根底にもその思想はしっかり焼き付いているはず。なのに何故いきなりそうなるの?マグルのことを好きにでもなったの?」

少女は自分の両腕を抱きしめ、必死に頭を回転させようとしているが思考が無限ループに陥ってしまっている。
少年は少女の口から発せられる言葉が次々に胸に刺さるのか、下唇を噛んで押し黙っていた。

「少し、口を閉じろ」

少女の無限ループを断ち切るように、片手で目を塞ぎもう片手で彼女を抱き締める。少年は耳元でもう一度、

「お前のことが好きだ。今はこの言葉だけが真実だ」

声にならない悲鳴と口をパクパクさせるばかりの少女は頬を真っ赤に染め立ち尽くす。
目を閉ざせばなお耳の奥底に響く彼の声。

その日から、少女は少年への恋を知った。


END


( Mr. マルフォイ! )
( びくっ )
( ハーマイオニーどしたの? )

先生→ハー子→ロン


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