( Nostalgie )


母の話は、少年にとって半分既存の事実だった。幼くも賢い少年は心の何処かで本能的に気付いていたのかもしれない。
あまり驚きもしない息子にハーマイオニーは戸惑いつつも、自分とドラコについての過去をすっかり話して聞かせた。

「このあなたの髪はね、あの人の血を受けて少し色が混じっているの。小さい頃のあの人に似てきたわ」

愛おしそうに息子を撫でる母の瞳は、息子への愛情で満ちていた。

「母さんは本当の父さんと一緒じゃなくていいの?」

ハーマイオニーの瞳が一瞬、揺れる。それを見逃さなかった息子は母の本心をついてきたのだった。

「私にはあなたがいるもの。それにロンとローズ、来年生まれてくるおなかの子もいるもの。それだけで、母さんはとっても幸せよ」

にっこりと笑う母に、満足した息子はつられて微笑む。

「母さん、僕もいつか会えるかなぁ...」

吸い込まれるように、眠りに落ちていった息子の言葉に少し哀しみを含んだ微笑をこぼしたハーマイオニーはゆっくりと息をはいて子供部屋を後にした。


「ロン、あの子に本当のことを伝えたわ」

「そっか。大丈夫だったかい?」

リビングでは心配顔で、ホットミルクを持ったロンが待っていた。

「えぇ、だいぶ落ち着いて聞いていたわ」

「...こんなことを僕が言うのもおかしいんだろうけど、ハーマイオニー...君はもしあいつが生きていたらどうする?」

苦虫を噛み潰したような顔でそんなことを言い出すロンに、彼女は正直に言った。

「ロン、あの人は必ず生きているわ。それにそんな顔をするなら、そういうこと言っちゃ駄目よ?私はここにいる。それでいいじゃない?」

若い頃から変わらず、花が綻ぶように妻は笑う。
その微笑みに安心してロンは彼女の肩にもたれるのだった。


「(ハーマイオニー、でもね僕は君が幸せであってくれればそれでいいんだ)」


To be continued...






20150301加筆修正


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