指先だけでそっと、
( 君に、触れる )


隣を見ると、君の横顔。月が綺麗ねと空を見上げる彼女の輪郭はさらりと白く夜の闇に映えていた。

「月が綺麗だ、」
「それの言葉、今私が言ったじゃないの」

彼女がクスリと笑みをこぼし、僕は急に恥ずかしくなった。君の横顔に見惚れていたなんて、正直に言える訳がない。

「でも、今日の月は綺麗だけど何だかこわいわ。このまま何処かに引き込まれてしまいそう」

月を見つめ、瞳を揺らして彼女は呟く。
今ここで、綺麗さの中に恐怖を秘めた満月を見ているのは僕らふたり。僕らを見ているのは、月だけなのか、はたまた森に住むケンタウロスや月に誘われた夜の魔物か。
どちらにせよ、確かにあるのは星が降ってきそうな空と、そこに浮かぶ満月、そして。

「ここにいるのは僕らだけ。誰にも連れ去らせやしない」
「今は頼もしいのね、マルフォイ?」

彼女のからかいの目線についムッとしてしまった僕は、指先で彼女の唇に触れる。

「この口は、悪い口だな。塞いでやる、」

「あら、指で塞ぐの?」

指の下の唇が動く度、その柔らかさを実感させられ、いざなわれる。

「...しょうがないわね、」

「...んっ?!」

僕の指は取り払われ、僕の鼻先が彼女が纏う香りで包まれた。

「見ているのはあの月だけよ」


そのひかりに恐怖までも含有した綺麗過ぎる月は、あのガリ勉な可愛いハーマイオニー・グレンジャーまで変化させてしまったようだった。

END






( 君は本当にハーマイオニーか? )
( ロンみたいなこと言わないで )
( あいつにもしたのか!? )
( ...そんな訳ないでしょ )



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