Wherever you are...
分霊箱を探しにホグワーツを出ることに決めた日、ロンはひとりホグワーツに残すパンジーをいつもの教室で待っていた。
女は男を待たせるものよ、というのがパンジーの考えらしいがロンは、それを恥ずかしがり屋な彼女の照れ隠しだと知っている。
それにしても今日は、遅い。半ば、あきらめながら待っていると扉があいた。
「パ、パンジ「やぁ、ウィーズリー」
そこにいたのは、プラチナブロンドのドラコ・マルフォイだった。いつもの冷笑を浮かべる、この青年は最近ハーマイオニーに対して妙に馴れ馴れしい。
「マルフォイ!? 何でお前が!?」
「まぁ...頼まれたんだ。ほら」
いきなり、ぴっちりと折りたたまれたちいさな羊皮紙を渡された。
「なんだよ?」
「早く動け、だそうだ」
「はぁ?」
「首席殿からだ。行けよ、僕だって暇じゃない」
やっぱり、ハーマイオニーか。それにはきれいな文字で天文台、と書かれていた。
「礼はいらないぞ?彼女の頼みだからな」
「何でお前がハーマイオニーから頼まれるんだ!?」
「頼れるからな、僕は」
「だからって、お前は純血だろ!」
「もう、そんな考えはすてたんだ。僕も会いに行くとしよう...じゃあな」
「っおい!?」
足早に去っていくマルフォイの背中はみるみる小さくなり、図書館の方向に消えた。聡いハーマイオニーは、僕らの関係に気づいている。おそらく天文台にはパンジーがいるんだろう。
あそこはきっと寒い。早く行ってあげなくては。
長い長い塔の石段は、今のパンジーとの心の距離を表してるみたいに思えて、僕はそれを全部壊すように駆け登った。
二人の距離はあと、数メートル。
「パ、パンジー!」
天文台の1番上のバルコニーには、こんなに寒いのにブラウス1枚で驚くほど小さくうずくまった恋人の姿があった。顔を真っ赤にして両目から大粒の涙をぼろぼろ零しながら、こっちを睨んでいる。
「なっ、なによ!こんなとこまで来たの?」
「あーあ、可愛い顔が台無しだよ?」
「だ、だれのせいだと思ってるのよ!」
とりあえず、着ていたカーディガンをちいさく震えるパンジーにふわりとかけてやった。
「ごめんね、パンジー。ハリーには助けが必要なんだ」
「あんたの助けが?どうせ、あの娘も行くんでしょ!」
どんなに話してもパンジーは、まだハーマイオニーを気にしている。
「ハーマイオニーとは親友だよ?それに僕にはこんなにも僕を想って泣いてくれる可愛い恋人もいるしね!」
もちろん、君のことだよ。
「あんたは、ほんっとにずるいわ」
パンジーは、真っ赤な鼻をぐずぐずと鳴らしてようやく泣きやんだ。
「素直なだけだよ?」
「ストレート過ぎんのよ、あんたは!まぁ、そこがいいんだけど...」
赤い顔をさらに赤くさせて、発せられた言葉になんて可愛いんだろうと僕はめちゃくちゃにキスをした。
「んっ、ちょっと!」
「何処にいても、君を想うよ」
君は僕の最後の恋人だから。
こくん、と頷く彼女を腕に閉じ込められる幸せを噛みしめる。この幸せを未来に繋ぎ、守るために僕はハリーの戦いについて行く。
「ね、このカーディガンあたしにちょうだい」
唐突に、パンジーが言った。
「え...いいけど、ぼろぼろだよ?」
いくら丈夫なカーディガンでも、さすがに兄のおさがりで僕も6年も着れば、いたる所がほつれ すり切れてしまっている。
「いいのよ、これあんたの匂いがするから抱きしめられているような気分になるの。...ちゃんと帰って来なかったらはっ倒すんだから!」
なんか、矛盾してない?でも こんな可愛い恋人を置いて死ねないな。
きっと、会いにいくよ。大好きだよ、パンジー!
END
( ふふ、 )
( なんだ、グレンジャー? )
( ロン、幸せそうだなって。...私もよ? )
( 当たり前だ。僕がいるんだからな。 )
( ふふっ、そうね。 )
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