私は貴方にふさわしい

ある日、私は授業に遅れそうになっていた。それもあいつのせいで!もうっ、マルフォイのやつ!!

わずか2、3分前のこと、ハリーたちとは別で変身術の教室へ急いでいた私は、廊下で珍しく一人だったマルフォイと 勢いあまってぶつかってしまった。
尻餅をつきながら、どんな言葉を吐かれるかしらと考えているとふいに、しかし彼にとってはごく当たり前であるかのように、私に陶器のような手を差し出した。
戸惑いながら手をのせると、彼は私をゆっくり立ち上がらせた。

「...すまなかったな」

そう言って、何事も無かったかのように立ち去る背中に開いた口が塞がらなかった。
そのすぐ後の変身術の授業は、マルフォイの手の感触、彼が纏うさわやかな香り、一言だけ発せられた声の深み、それら全てが頭から離れなかった。
ついつい頬が熱くなり、身体中(特に右手!)が火照ってくる。こんなんじゃ、マクゴナガル先生に気付かれたかもしれないわ。

全ての授業が終わった後も、鈍いロンやハリーに心配されるくらいぼーっとしてしまった。

そんなことがあった日の翌日、大広間で朝食をとっていた私たちのところへ、ロンのピッグウィジョンやハリーのヘドウィグの他にもう一羽のふくろうが白雪のような薔薇の花束を咥え、目の前に飛んできた。

「...!!君はいつから花束を贈ってくるようなヤツが出来たんだい?」

「そんな人、いないわよ!!!」

「でも、綺麗だね〜!」

周りの視線に耐えられず、私は大広間を急ぎ足で飛び出した。急ぎ足だけのせいじゃない動悸を落ち着かせるために、廊下の壁にもたれて挟まっているメモを読んでみると、

「昨日のお詫びだ。だから、ありがたく受け取れ。D.M」

...マ、マルフォイですって?!
また、体温が急上昇するのがわかる。
どどどどどうしましょうっ!!!
花束を抱え、あたふたしているとタイミング悪く向こうからマルフォイがやってくる。

「...届いたようだな」

「ああああなたっ!どういう風の吹き回しよっ?」

「...? メモを読まなかったのか?」

「読んだけどっ!」

「ぶつかったお詫び。じゃあな」

ニヤッとした微笑とともにマルフォイが去ると
しばらくしてネビルが駆け寄ってきた。

「あのね、ハーマイオニー!白い薔薇ってね『私は貴方にふさわしい』っていう花言葉があるんだよー」

へぇ〜...って、私ったら何に感心しているの!あぁ、もうマルフォイの顔まともに見れないわ...。

私はその場所から、しばらく動けそうになかった。

END


( ねぇねぇ、誰にもらったの? )
( なっなに、ジニー? )
( あっ、カードだ! )
( ...っっっ?! )


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