獅子と蛇の恋人たち

仲間にマルフォイとの間柄を打ち明け、親友二人からの険悪な視線を払拭してからかなりの月日が経過した1月の終わり。私はグリフィンドールの談話室で親友の一人に、とても驚かされる相談を持ちかけられた。

「...ちょっと待って!もう一度、ゆっくりと、話してちょうだい。エイプリルフールは あと2ヶ月先よ?それに、そんな簡単な嘘で騙せると思った?」

私が早口でまくし立てると赤毛の、最近 成長期な親友は困ったように眉を下げ、顔を赤らめてさっき話した言葉を始めからゆっくり、つむぎ始めた。
トライウィザードトーナメントのダンスパーティーの時、偶然見かけた可愛い女の子のことを好きになったのだと言う。
その人は、優雅な物腰で緩やかな曲線を描いた華奢な身体が頭を離れなくなったらしい。

「で、マルフォイと踊っていたんでしょ?」

私の質問に彼はうっとりとした顔で肯定を示した。

「あんな白イタチと踊っていても、彼女だけは絵になった」

ため息をつきながら、私は事実を話した。

「ロン、そのマルフォイと踊っていた人はスリザリンの、パーキンソンよ。パンジー・パーキンソン」

あなたまでスリザリンに恋してしまったのね。

私の言葉に赤面しながら恥ずかしそうに頭をかいたロンは、君の気持ちが分かった、親友として一番応援すべきだった、と すまなそうに頭を下げ、微笑んだ。
私たち二人がスリザリンに恋をして、ハリーは少し不満そうだったけど今はとても応援してくれている。
ロンは最近、パーキンソンとの距離を縮めつつあるらしく、毎日、彼女を目で追ってはふにゃりと
顔をほころばせている。

2月の始め、私たちはまた談話室で互いの恋を相談しあった。

「ロン、バレンタインはどうするの?」

「もちろん、パンジーに何か贈るよ!でもさ、女の子って何をもらったら嬉しいのか全然分からないんだ」

「何でもいいの、気持ちが込められていれば」

「じゃあ、君はあいつに何を渡すの?」

「私は...秘密よ!」

「えぇ〜!」

「それはともかく、パーキンソンはマルフォイにも渡すのかしら?」

私がふと漏らした言葉に、二人して顔を見合わせた。

「だっ、だめだ!よりによってマルフォイなんて!!」

そう言うとロンはすごい勢いで、パーキンソンを探しに飛び出していった。

「私も嫌だわ。そんなこと言っても贈り物は減らないでしょうけど」

ぽつりとつぶやいた私もなんとなくマルフォイに会いたくなって図書館へ向かったのだった。

図書館に来てみると放課後だったためか人は少なく、目当ての彼は奥まった場所で本を読んでいた。冬の日差しにきらめくプラチナブロンドの髪が綺麗で、少し見とれてしまった。
近くに寄って、声をかけようとすると一瞬早く目があい、もも色に染まった頬がゆったりほころんだ。

「やあ、ハーマイオニー」

ふたりだけのときに呼ばれるファーストネームにくすぐったくなり、自分の頬が熱くなるのが分かる。

「よかったわ、ここにいて」

「さっきパンジーの所にウィーズリーが押し掛けてきて、ここに避難したんだ」

「ロンも見つけられたのね」

「君は何故、僕を探していたんだ?」

「ロンとあなたたちの話をしていたの」

マルフォイは、私の顔をまじまじと見た。少し怒っているのだろうか?空色の瞳の奥が揺らいでいる。

「だ、だから私あなたに...ドラコに会いたくなって」

真っ赤になってそう告げると、瞳の揺らぎがなくなり、抱きしめられた。

「みんなに見られちゃうわ!」

「大丈夫、ここは誰にも見えないさ」

私も彼の背中に腕をまわし、彼の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「さっき、ちょっと怒ってた?」

不安になりながら、彼を見上げる。

「だって君が、ウィーズリーの名前ばかり出すから!」

唇を少し尖らせながら言う彼がとても愛しく思い、プラチナブロンドを撫でた。

「僕は子供じゃないっ」

「分かっているわ。でも、こうしたかったの」

「あ!ハーマイオニー、バレンタインはもちろんくれるよな?」

マルフォイは照れ隠しのように早口で言ったけれど、隠せてないわよ。

「そのつもりだけど、たくさん食べたら虫歯になるわ。」

「僕は、1つだけ食べるつもりだけど?あとはクラッブとゴイルの胃の中。だから、虫歯にはならない。くれるよな、ハーマイオニー?」

嬉しくて涙が零れそうだった。

「もちろんよ!」

私、本当に幸せだわ。
「ドラコ、大好き!」


その少し前、ウィーズリーは...

「パンジー!」

僕の隣にいる、彼女を見つけて頭の中がそれでいっぱいになってそうな勢いで走ってきた。

「パンジー、君はバレンタインは誰にあげるんだい?」

突然、そんな話をされたパンジーは僕を気にしながら、たどたどしく言った。

「あなたには心配せずとも、あげないわ。私があげるのは、ドラコ一人よ!」

「マルフォイ?!」

ハーマイオニーから勧められた本を読んでいた僕に刺々しい視線が刺さる。いたたまれなくなり、僕は言った。

「パンジー、もっと素直になったらどうだ?」

「でっ、でも!!」

「黙れ、マルフォイ!パンジーは十分素直だ!」

おいおい...。ないがしろにされてもお前は、彼女を庇うのか僕はどこか別の場所で、この本を読むとしよう。まったくもって、面倒くさいやつらだ。


END


( ねぇ、パンジー!ねぇったら )
( うるっさいわね、あんたにもあげるわよ! )


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