「んーっ、……眩しっ」

ふと、アタシは目を覚ました。
だけどカーテンの隙間から差し込んでくる朝日が眩しくて反射的に目を瞑る。
そしてこのまま二度寝に突入しようかと思ったけど、なぜか寝ることができなくて、重たい体を起こした。

枕元に置いてある目覚まし時計を見ると、今の時刻は六時十五分。
こんな時間に起きたのは久しぶりというか初めてで思わず目が覚めた。
いつもなら始業時間ギリギリまで寝ているか、誰かが起こしに来るまで寝ているかのどちらか。
でも今日早く目が覚めた原因は、きっと夢のせいだろう。

「…いったい、誰なんだろう」

アタシは小さい頃から、生きていた時の夢を視ることがある。
でもはっきりと覚えているわけじゃないだ。
夢に出てくる人の顔はぼやけているし名前も分からない。

生きていた時の“夢”は視るけど、生きていた時の“記憶”はない。
だから“夢”を視ても懐かしいと思うことはない。

「……どうして…」

小さい頃で呟くと、ガチャ、と寝室のドアが開いた。
俯いていた顔を上げると、幼馴染み兼同期の日番谷冬獅郎がいた。

「珍しく早く起きて……何かあったのか?」
「え…?」
「…気付いてねえのか?」

泣いてるぞ、と眉間にしわを寄せて冬獅郎は言った。
目尻に手を当てると、確かに涙が流れていた。
―――シロちゃんに言われるまえ、自分が泣いていることに気付かなかった。

「…久しぶりにね、夢を視たんだ」
「夢?」
「生きていた時の夢」
「!」

冬獅郎は目を丸くした後、さらに眉間にしわを寄せた。
幼馴染みの冬獅郎は、アタシが生きていた時の夢を視ることがあると知っている。
生きていた時のアタシがどんな人で、夢に出てくる人たちがどんな人たちなのかも、冬獅郎にはすべて話している。

普通の死神には生きていた時の記憶はないし、夢で視ることもない。
だから生きていた時の夢を視れるのは、正直なところ嬉しい。

誰だって生きていた時の自分がどんな所で、どんな人たちと出会って、どんな風に生きていたか知りたいはず。
それを夢で視ることができるアタシはラッキーだと思う。
でも嬉しいと思う反面、哀しくもなる。
だってアタシはもう死んでいるから、生きている人たちに逢うことはできない。
家族や友達などの自分の大切な人には、どんなに逢いたくても逢うことができない。
話をすることも、みんなで色んなことをすることも、もうできない。

「…大丈夫か」
「うん、大丈夫だよ!」

冬獅郎には笑って言ったけど、ホントは真っ赤なウソ。
ウソでも大丈夫って言わないと、冬獅郎は酷く心配をする。
……だけど冬獅郎にはこんなウソ、簡単に見破られてるはず。
だってその証拠に、冬獅郎はすごく哀しそうな顔をしているから。


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