砕蜂隊長に穿界門までの行き方を教えてもらえたのにも関わらず、途中でまた迷子になったけど、なんとか穿界門まで来ることができた。
門番の二人は「今日もお疲れ様です」と苦笑いしながら穿界門を開けてくれた。
門番の人たちもアタシの方向音痴についてもちろん知っている。…すごく恥ずかしいよ。

「さてと、お仕事頑張りますかー………ん?」

穿界門の中を一匹の地獄蝶に導かれながら歩いていた。
だけどその地獄蝶の様子がどうにもおかしい。
ひらひらと飛んではいるけど、飛び方がどうにもおかしい。

「調子でも悪いのか……え?」

地獄蝶に触れようと手を伸ばしたら、地獄蝶が粉々に散ってしまった。
そんな光景を初めて見たアタシは、思考回路が停止してしまった。

「…わぉ。これってかなりヤバイ状況だよね? とりあえず、シロちゃんに連絡…」

アタシはポケットから伝令神機を取り出した。
すぐにアドレス帳を開いて冬獅郎の名前を探す。
冬獅郎の伝令神機の番号を見つけた時、履歴から探せば良かったと後悔した。
電話をかけるとコール音が数回して、冬獅郎の伝令神機に繋がった。

「もしもしシロちゃん?」
『……はあ…』
「あ、シロちゃんだ。あのねー」
『今でどこで俺だと確信した』
「溜息」
『…用件はなんだ』
「実はねシロちゃん。ちょっとヤバイことが起きちゃった」
『何かあったのか? それとお前、いい加減にシロちゃんは止めろ』
「冬獅郎よりシロちゃんの方がカワユイじゃん。それでね、地獄蝶が消えちゃった」
『カワユイ言うな……地獄蝶が消えた?』

電話越しでも分かるくらいに、冬獅郎の声が低くなった。
きっといつも以上に眉間にしわ寄せてるんだろうなー。
シロちゃんの質問に頷くと、今ドコにいるのか場所を聞かれた。

「もちろん断界の中だよ……あっ」
『どうしたんだ?』
「なんか明かりが見えてきたから、そっちに進んでみるね」
『待て! 今は迂闊に動き回るな!』
「断界にジーっとしてるよりマシだよ。拘突が現れないうちに移動しないと」
『だからってな!』
「とりあえず、技術開発局に連絡してみて。じゃあね!」
『おい待っ―――…』

冬獅郎が言い終わる前に伝令神機を切ってポケットに戻した。
そして明かりが見える方に向かって、アタシは歩き出した。







「あの馬鹿光理!」
「た、隊長? 何かあったんですか…?」
「十二番隊に行くぞ」
「………はい?」



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