南沢はひどく震えていた。それは怖さからくるのか寒さからくるのか分からなかったが、どこか虚ろな目をしていて視界には何も入っていないようだった。

「どうしたんだ」
話しかけると、意外にも冷静でいた。

「・・・次の試合って雷門だろ」
「あぁ、そうだ。」
「・・・怖い、怖いんだ・・・」
「怖い?どうしてだ?あんなやつら我らにかかれば・・・」

さっきよりもひどく震えているのに気づいて話すのをやめた。これ以上、何かを言えば南沢を不安にさせてしまうかもしれないと思ったからだ。
南沢が何に恐れているのか知ることはできない。だから、南沢のためを思ってしばらく側にいてあげた。

そんな不安定な状態で試合にのぞめるものだろうか、とたかをくくっていたが、当日になると南沢は生き生きとしていた。

「分からん奴だな」
南沢にそう言うと奴はにやりと笑った。誉め言葉ではないが、なぜか嬉しそうだった。

「そんなことでしか、自分を主張できないのか?南沢」
「・・・そうなのかもな」

またも嬉しそうな顔をしている。なかなか喰えん奴だ。

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