狩屋と葵
狩屋くんが派手に転んでしまってこれは切り傷でも作ったなぁと思い、救急箱から道具を取り出そうとしたときに消毒液がなくなっていることに気付いた。そして、絆創膏もちょうど切れていた。
「ねえマネージャー、消毒液とーバンソーコー頂戴」
「ごめん、今切らしてるみたい。保健室から貰ってくるからちょっと待ってて」
「えー、それじゃあ遅いよー」
狩屋くんは指を傷つけてしまったようで、ぱくりと口でその指をくわえた。
狩屋くんは私のほうを見て、こうやって塞がないとばい菌が入るだろ?、と不満そうに言った。ちょっと私に怒っているように見える。
確かに道具をちゃんと確認してなかった私も悪いけど、ちょっとの間待てない狩屋くんも悪いと思うの。
「はやく保健室に行って物をとってきてくれないと、俺の指の傷、大変なことになるんだけど。あとついでにリップ、購買から買ってきて」
「なんでリップ?」
「……もういいや、保健室はいいよ。俺の血止まったし。それにリップ買いに行っていると時間かかるから、ここでしてもいいよな?」
「なんで私に聞くの?そしてなにをするの?」
多分一瞬だったと思うけど、長く感じた。
狩屋くんの顔が私の至近距離にあってそして唇が何かに触れてて、それがなんなのかも分かるのに1秒もいらなかった。
「ちょ、ちょっと!」と、私は狩屋くんに言い放った。
「だってー、マネージャーの唇乾燥してて血ぃ出てたから、はやく塞がないとばい菌入ると思ってー」
と狩屋くんはぺろり、と舌を出した。