狩屋と葵

※意味不明





いたずらなあどけない顔がふとした瞬間に真剣になる。その顔を見ていると胸がつまりそうになるから好きじゃない。
その気持ちが独占欲とかいういやらしいものだと知ったのはつい最近のことだ。

サッカーをしているときの顔を見ているのはなにも私だけじゃない。同じ部活の天馬や信介だって見ているし、他のマネージャーの先輩とかも見ている。そしてサッカーに関係ないほかの女の子だって見ている。それが気に食わない。
キャーキャー言っているその声が耳障りだ。サッカーなんて知らない癖に、狩屋くんのあの真剣な顔を見ないで。

狩屋くんの顔を見ているとぽろぽろと涙がこぼれ始める。どうしてだろう、何度拭いても拭いてもあふれてくる。
そんな時、「空野、どうしたの?」と狩屋くんが心配して聞いてきた。ああ、もう最悪。こんな顔を狩屋くんに見せたくなかった。

「…狩屋くんを見ていると悲しくなるの」狩屋くんにそう言うと不思議そうな顔をされた。「その、サッカーをしているときの真剣な顔を見るとつらくなるの……」

「俺がサッカーを楽しくやってるのに空野がつらい思いをするって変な話だな」
「……そうだよね」

しばらく沈黙が続いた。実質的には数分だったはずだけど私はその時間が永遠に思えた。まともに直視できない狩屋くんの顔はどんな顔をしているんだろう。

「……俺、そんなつらそうな顔の空野見てるのがつらい」――だからさ、俺を見ているときでも笑ってくれよ。

「ごめん、多分無理かも」
「どうして…」
「だって、」と私はさっきから狩屋くんに注目している女の子たちに視線を向ける。「だって、狩屋くんの真剣な顔を他の子に見られるのがつらいんだもん」

「…………じゃあ、空野の前でしか真剣な顔しないことにする。それでいいだろ?」
「な、なんでそうなるの。別にそこまで…」
「…多分、空野と同じような気持ちだから、かな」




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