吹雪と春奈


※冬休みに吹雪くんが東京に遊びにきているという設定




はー、と白くなる息を吐いて春奈さんは嬉しそうに僕の方を振り替えって笑った。とても寒いですね、と春奈さんは言ったけど僕からしてみれば全然寒くなんかないし、別に嬉しくなるようなことなんかじゃない。確かに僕は寒いのは苦手ではないが嬉しくなるほど好きというわけではない。
少し降り積もった雪の上を走って足跡をつける君は僕の住んでいる北海道には飽きるほど足跡をつけれるくらいの広い面積があることを知らないんだろうなぁ。いや、知っているかもしれないけどなかなかその感覚が分からないんだろう。東京の面積の何倍ってくらいしか感覚がなさそうだから本当の広さを知らなさそうだ。あれ?でも春奈さんって僕たちのところにきたことがあるから北海道の広さは知っているのか。いや知っているのならこんなちっぽけなもので喜ばないはずだけど......うーん、春奈さんは不思議な子だな。
肩になにかが当たり、それを投げたと思われる可愛い女の子の方を見た。その可愛い女の子は手をこすって暖めているところから僕に雪玉を投げたと思われる。そんな難しいことを考えなくても春奈さんが僕に何を投げたのなんか一瞬で分かっていたけれども。
僕は一瞬ためらったが彼女がそうして欲しいと望んでいるからやってあげよう。僕は地面のわずかな雪をかき集めて雪玉を作った。気温が低いわけじゃないから少し水っぽくて作るのに苦労した。僕はそれを軽く投げると春奈さんの足元に当たって砕けた。春奈さんは怒ることなく僕ににこりと笑った。
「冷たいですね」
「うん、そうだね」
まだ手を押さえている春奈さんをわき目に見ながら僕は周りを見た。黒いコンクリートと白くびちゃびちゃしている雪を見てため息が出る。どうしてこんなにも美しくないんだろう、北海道は雪の下に何があるかなんて春がくるまで思い出せないというのに。
「吹雪さん?どうしたんですか?」
「......このコンクリートとかの人工物がぜんぶ消えるくらい雪が降り積もればいいのになぁって思っていたんだ」
春奈さんはそれじゃあ寒いですよと言った。寒くてもいいじゃないか。もし僕の言ったくらいの雪が東京に積もってくれれば、僕は君を暖めるためにそこにいるよ。
「さあ染岡くんたちのいるところへ戻ろう、風をひくまえにね」
でも、僕の望んだことは絶対になるはずがないから君が寒いと言ってもどうすることもできない。だから、君に寒い思いをさせてしまう前に僕がそれから守ってあげるよ。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -