一之瀬と秋


こんなところで見つかってしまえば僕のチームや秋のチームにも迷惑をかけてしまうリスクはあったが、俺はどうしても君に会いたくてしょうがなかった。ジャパンエリアのグラウンド周辺には人ひとりが隠れるにはちょうどいい太さの木があり俺はそこの影から君を見ていた。せっせとボトルを選手たちに配っていたがその渡されているのが自分じゃないのが気にくわなくてぐっと身を乗り出してその渡されたやつを見ようとした。ちらりと見えた髪の毛の色は紫で、俺はそんな色の髪の毛の持ち主は知らなかった。俺の知らないやつに微笑んで、どうやらそいつを励ましているように見える。相手の表情が見れなくてとても複雑な気持ちであったため俺はさらに身を乗り出した。
「うわっ!」
ぐわりと視界が回転して腰にじわりとした痛みを感じた。乗り出しすぎて体のバランスを崩してしまう俺はまだまだ未熟者だ。いてて、と腰に手をあてながら立ち上がると何人かが俺に気付いたようだった。そして真っ先に秋が俺のところへやってきた。
「一ノ瀬くん、久しぶりね。どうしたの?」
「うん久しぶり。ちょっとこっち来て」
秋がいいよと返事をする前に俺は秋のその白く柔らかい手をつかんでグラウンドから離れたところまで連れていった。
「秋......」
俺は秋の髪の毛を少し崩れてしまうくらいの力で頭から触り、肩、腕、そして腰を包み込むように抱き締めた。
「い...ちのせく...」
心臓のドキドキした音が伝わりそうで怖かったけど、むしろ伝わってほしかった。秋が俺の気持ちに気づいてくれればいいのに
「あき...、ありがと」
充電完了、俺は秋の頭をそっと撫でた。




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