立向居と春奈





「え?木暮くんが?」
「うん、そうなのよ。ビックリでしょ?」

本当に驚いた。あの木暮くんがすごく有名な大企業に入っていたなんて。『あの』とか言ったら失礼だね。

「なるほどね。だから春奈さんが嬉しそうな顔をしてるわけだね」
「そ、そうかな...?」
「毎日のように会えるもんね」

僕は長期の休みの時しかそっちに行けないけど、木暮くんはどうだ。秋さんの木枯らし荘と学校の距離はそれほどないから会いたいときに会える。

「...毎日ってわけじゃないのよ。だってあの人忙しいみたいだからね...」
「でも、会いたいって言えば会えるでしょ?」
「うん、まぁね」

これほどまでに木暮くんを羨ましく思ったことはない。春奈さんにこんな顔をさせられる人は数えるくらいしかないだろう。その中に多分僕は入っていない。

「...お幸せに、ね」
「なっ、何いってるの...!私達はそんな仲じゃないわよー!」

顔を真っ赤に熱らせている彼女に向けた僕の顔はきっとひきつった笑みを見せていただろう。笑うことを、祝福することを素直にできない僕にはピッタリな惨めで醜い顔だ。








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