剣城と天馬と葵

※gdgd




きっと剣城くんは屋上でさぼってでもいるんだろうなぁと雲ひとつない空を見て葵は思っていた。何故か葵のなかでは不良というものはそういうものだと考えていて、剣城もその典型的な不良の一人と考えていた。
退屈な英語の授業。どうせなら世界の料理とかお菓子とかの名前を学ぶ授業をしたいとも思っていたがそんなことは実現不可能と葵自身も分かっていたため、現実の残酷さに深いため息をつきシャープペンシルでカリカリと絵を描き始めた。
ただなんとなく棒人間を描いていたがだんだんそれに飽きてきてゴシゴシと消ゴムで消した。黒く跡が残っていた。安い消しゴムだからなぁと跡がちゃんと消えるまで何回も消しゴムの動作を往復させた。
疲れるだけの授業はなかなか終わらない上、先生に何回も当てられてしまって最悪だった。やっと終了間際になったと思ったら今度は宿題を出してきた。この先生の出す宿題は量があるし応用とか少し難しいものばかりで生徒には不評だ。今回もか、と思いながら宿題のプリントを目でちらりと見た。ちょっとしか見ていないのに葵は直感で面倒くさそうと思った。
休み時間に友達と話すのが日課だった葵は同じ部活に入っている松風天馬と西園伸介のもとへと向かい、昨日のテレビで放送していたサッカーの試合について話し合った。どっちが勝ってあっちが負けたとかこっちが強くてあっちは弱いとかいう内容じゃなくて選手の個々の能力について。さすがはプロなのかキレがあって無駄な動きが少かった。そしてもっとも魅力的なのはどんどん繰り出す必殺技だ。DFが超ロングシュートを決めたとか、MFの技が凄かったとか話のネタはつきない。
こんな風に話していると時間がすぎるのなんてあっという間で、休み時間の短さを憎らしく思った。なにかをするには短く、なにもしないのでは長い。
次の授業は先生の具合が悪いそうで実習となった。本来ならば代わりの先生がくるはずなのだが、今日は何故かこない。まあたまにはそういう日も合っていいよね、と猫のように背伸びをした葵は空を見た。
さっきの授業のときと変わらない綺麗な空。葵は剣城が屋上にいそうだなと思ったことを思い出し、なんとなく行ってみたくなった。実習でも今は授業中。さすがに抜け出すのは難しい。葵は再びカリカリと音をたてながら絵を描き始めた。さっきは棒人間を描いていたが今度はちゃんとした人を描こうと思って隣の天馬の横顔をスケッチした。特にふわふわの天然パーマを描くのが難しく途中で断念した。
時間があまっていたし、特にやることもなかったから今度は剣城と伸介の絵を描き始めた。二人がベンチに座っている場面を思い出して記憶をたどりながら描いたのだが伸介はあまり上手く描けなかった。これじゃあ伸介には見せられないわねと苦笑いした。一方剣城の方はというと本当に良くできていた。
(上手く描けた。後で天馬とか伸介に自慢してやろー)
うししと心のなかで笑い、その絵を大事そうにファイルに入れた。
そして休み時間。葵は早速天馬の元へ向かってさっき描いた剣城の絵を見せた。
「おー!葵うまいねー!」
「ホントホントー!すごいっ」
「えへへ、ありがと」
この絵を剣城に見せたらどんな反応するんだろう、と三人は思っていた。多分興味ないだろうけど少しは照れそうだなと思ったのは天馬と信介の二人で、怒りそうだなと思ったのは葵だった。二人に剣城に見せたらいいんじゃないかなと言われたが葵は怒られそうだと思って見せたくなかったが、あんまり強く主張してくるので結局見せなくてはならなくなった。怒られたら二人のせいなんだからと思いつつ、剣城がどんな反応をするのか気になっていた。
その日、部活が始まる前に少し時間があった。それは2,3年生たちの集会があり思ったより遅くなっているからだ。三人は今がチャンスだと思って剣城のところへ行き、葵の絵を見せた。
「あ?何の用だ?」
不機嫌そうに言っていたが素直に絵を受け取った。
怒ることなくじっと絵を見つめている剣城は三人の目には不思議に見えた。すぐに怒るかと予想をしていた三人はその剣城の行動に驚かされた。
(怒らないね...)
(きっとその絵を気に入ったんだよ)
葵は頬を赤に染めて剣城のほうを嬉しそうにみた。
天馬はその葵の様子に気付いて葵のきらきらした目とは対称的な目で剣城を見た。




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