一年ズ(天馬、信介、剣城)と葵





「剣城が待ってるよ。早く行ったほうがいいんじゃない?」

僕はそう言って葵の背中を強引に押した。
はやく結ばれろよ、とか、くっつけよ、などどひやかせるのは、葵が剣城のことをどう思っているかを知っていて、剣城が葵のことをどう思っているのかも知っているからであって、憶測とか妄想とかで言っているわけじゃない。

「え?本当?…じゃあね」
「うん、バイバイ」

カバンをぐいと持ち上げてかつかつと音をたてながら廊下を駆け上がっていった。
そして、信介とすれ違い、バイバイとかじゃあねとか挨拶をした。信介はまゆを少し吊り上げたようにゆがませて話しかけてきた。

「天馬…?葵ってもう帰るの?」
「うん、そうみたい…」
「ん〜、じゃあ二人だけかぁ。寂しいなぁ。明日は三人で帰れるよね?」
「多分ね」

信介には葵が剣城と一緒に帰るなんて言えない。信介が葵のことをなんて思っているかわかっているから。俺が。きっと明日も俺達二人だけなんていえるわけがなかった。

帰り道、二つだけの影がのびて形を変えていた。
俺と信介の影の長さは大分違う。信介の方が俺よりもっともっと小さく、短い。

「ねえ、今度の休みさぁ、天馬の家に行ってもいい?」
「うん、いいよ」
「じゃあ僕はお菓子をたくさん買うから、天馬はジュースを買って」

「じゃあ葵も呼ぶ?」
「葵はきっと用事があると思うよ」とにこりと笑った。
俺は、あ、と思って下唇をすこし強く噛んだ。

信介はきっと葵の気持ちがどこへ行っているのかもう知っていたんだろう。俺よりとっくの前か、同じくらいの時期に。
俺のように、信介も俺を傷つけたくないからこそ嘘をついて何も知らないフリをしていたんだろう。




一年ズ(天信剣)→葵で剣→←葵




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