錦と水鳥
「わしゃーおまんのことが好きかもしれんのぉ」
空をぼうっと眺めている竜馬はちらりとアタシの方を見て息を吐くことと同じくらいに自然に言った。
「は?」
「…いや、ほんまや」
「もう少し頭を冷やせ」
竜馬は、小さく息を吐いてまた外を見始めた。
あんたがアタシを好きになるとかありえないから、うん。コイツは絶対勘違いをしているんだ。
「なぁ水鳥…。やっぱりわしは好きじゃ」
困惑してそう言ってきたもんだから私も困った。
そう言われるとどう返せばいいのか分からない。
「ぜっっっったい違うだろ、お前はなんか勘違いしてるだけ」
「それはない。絶対にな」
「…………いーや、勘違いだ。つか、お前に恋愛とか青春とか全然似合わねーし」
勘違いじゃないぜよ、と何度かつぶやいて椅子にどんと腰掛けた。
少しふてくされている。
「ま、水鳥がわしのことを嫌いでも、わしはあきらめんからな」
眉尻を吊り上げてにっと笑った。
アタシは、勝手にしろ、とつぶやいて竜馬に背中を向けた。いま、顔が赤くなっているのがとても悔しい。