改と春奈
「え?何だって?」
目の前の彼はどうやら事態を飲み込めていないらしい。
「もう一度、言おう。マネージャーを1日でいいからお借りしたい」
円堂守の目が点となっているから、まだ理解してないみたいだ。
理解できないのかこれだからうんぬんかんぬんと言うのは流石に相手に失礼か。返事をくれるまで待ってやろう。
「・・・な、なんで?」
「我々の学校のサッカー部にマネージャーがいないのでな。それで頼みにきたんだ」
「あ、あー・・・。なるほど・・・。ちょっと、マネージャーに聞いてくるよ・・・。すぐ来るから待っててくれ」
「あ、万が一、都合がつかないなら我々は手をひこう」
「分かった、でも出来ることならなんでもするからなー」
少々頭が悪いが、なかなか良い奴だ。うちのキャプテンが一目置いてるのも分かるような気がする。
マネージャーが4人いるが、できれば全員来てほしい。少なくても一人はほしい。雷門くらいしか我々の頼みを聞いてくれなさそうで苦労しているから。
「あれ?御影中の人ですか?」
少し高く綺麗な声が後ろからしたもんだから、振り返ると、青い色の髪の毛の女子がメモ帳片手にたっていた。
「ああ、そうだ」
ようやく気づいたが、この人は雷門のサッカー部のマネージャーだ。何回か見たことがある。
「やっぱり。何か用事でもあるんですか?」
「君、サッカー部のマネージャーだよな?ちょっと頼み事があるんだが・・・聞いてくれるか?」
音無春奈という名前だったことを思い出して、音無さん、と後付けした。
音無さんは急に名字で呼ばれたからかとても驚いた顔で俺の方を見たけど、すぐにまた前の微笑んでいる顔に戻った。
「はい、もちろん!」
後から思うんだが、俺はこのときにはもう恋ってやつをしていたんじゃないかと思う。この時、心臓がすごくドキドキしていたのを覚えている。原因は分からなかったけど、今なら分かる。
「実は、我々のサッカー部はマネージャーがいなく、とても苦労していて、1日だけお借りしにきたんだが・・・」
「えっ?そうなんですか?じゃあ私行きますよ!」
こちらにこれば、偵察やら調査やらができるそうで、なにも悪いことはないそうだ。我々にとってもマネージャーがくることは損ではない。ウィンウィンだ。
他のマネージャーも是非とも来てほしいものだが・・・。円堂がこないと何も分からない。
早く来てほしいものだ。二人だけでいるのも結構気まずくなりそうで嫌なんだ。
「あ、音無ここにいたのか!」
「はい、ちょっと前から。どうしたんですか?」
「ああ、そうだ、円堂。音無さんはきてくれることになったんだ。」
音無さんは手を海上保安庁の人たちのようにビシッと決めた。
「そうなのか?」
「他のマネージャーはどうなんだ?」
円堂はうーんとうなり声をあげて、顔からは汗がでていた。この反応からすれば駄目だったことが分かる。
「さ、三人とも用事があるそーで・・・」
「それなら仕方がない。こちらからアポなしで来てしまったんだからな。それに音無さんがきてくれることになったから平気だ。ありがとう、感謝する」
俺はそう言って音無さんに来て貰う日にちや場所を教えて、二人と別れた。困ったときはお互い様だしな、と円堂に言われた言葉が何度もループしている。良い奴じゃないか、と改めて実感し、俺は雷門の校門をくぐった。
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多分続く。
みかげせんのうの生徒で一回何かしてみたかった。
改くんかっこいいですよね。