アルファとベータ


――アルファ、アルファ。アルファ来て下さい。
無表情でどう見ても不機嫌そうだけれども彼は私の手の元にやってきてくれた。一方的に私が握っていただけだったけど私はとても幸せで幸せでずっとアルファの手を握れていたと思う。

「アルファ、大好きです」
「……」
「何か言ってくださいよぉ……」
「…………」

アルファは私と目を合わせてくれない。多分、私のことが嫌いなんだろう、と思ったときアルファにしては珍しく真っ赤な顔をして、私もだ、と頬にキスをしてくれた。
「……きゅ、急にどうしたんですか?」
「気分」
「気まぐれ、ですね」

逃げ出しませんか、こんなことから。もうすべて捨てて逃げてしまいましょうよ。
アルファ、あなたの手は絶対離しませんからこことは別のところへ逃げましょう。
「君が何を考えているのかは大体予想がつく。エルドラドから逃げたいんだろう?」
「えぇ、そうです。もう疲れました。」

アルファは私の顔を見て、しばらく考え込んだ。考えるときも彼は無表情だけど、彼の心情はある程度分かる。
「じゃあ逃げよう、見つかるまで逃げよう」
私はアルファの手をとってしっかりと握り締めた。アルファは今度はしっかりと握り返してくれた。絶対、守り抜く。そう言ったのが聞こえてなんだか恥ずかしくなったけど、私は力強く返事をした。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -