豪炎寺と冬花

ごうえんじせんせい、と呼ばれていたかもしれない可能性の話を時々考える。サッカープレイヤーなんていう大きな賭けに出て失敗したわけじゃないが、結局その地位も失ってしまい、すべて、すべてだ、何もかもなくなってしまった。
朝起きて愛しい妹に挨拶をして自分の職場に出かける。サッカーに関係のある仕事だが、時々フィールドがまぶしく儚く見える。自分はそこには立てない。

あのときだ、人生の分岐点とも言えるFFlの舞台。あそこであきらめていたら、と考えてしまうときがある。今の現状を思うとやはりあそこでサッカーをやめておくべきだったのだ、父の言いなりになり病院の跡取りになっていれば……。
自意識過剰かもしれない。あの時自分がいなかったらきっと日本チームは負けていただろう。そうすれば今の現状にはならないはずだ。そして数年たち自分は医者となり、彼女は看護師になっているはずで、そして……。上手く行けば彼女との交際も可能だったのかもしれない。
でも過去の話であり、あくまでも可能性の話だ。

それからとても遠い未来から、自分にとっては天使なのか悪魔なのかそれともどちらでもない存在なのか分からない彼らがやってきた。自分のところにやってきたのは自分の強い気持ちに引き寄せられたのだろうか?今となってはもう分からなくてもいいが。


「豪炎寺先生、」
看護師である彼女はその先をなにも言わなかった。心臓がドキドキしている。もしかしたら人生で一番緊張しているかもしれない。
「……ずっと」
そうずっとだった。君にこの一言を言いたくて言いたくて何度涙を流した事だろうか。彼女には自分のこの惨めな心臓の鼓動が聞こえているのだろうか。


自分の欲望のためにFFIでのサッカーの過去を断ち切ってしまったことは決して許される事ではない。張り切っていた円堂のことも思うと胸が痛む。
でも自分はこんな生き方しかできない。いつだってそうだ、ある時は妹のために味方の足手まといとなり、ある時は医者の道かサッカープレイヤーか選べるときサッカーをしたいからという理由でサッカープレイヤーの道を選んできた。自分の欲望には、勝てない、





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