豪炎寺と夏未

雷門と呼ぶのが癖になっていて結婚したあとも雷門と呼んでいた。照れくさかったのもあったけど、多分自分が雷門と結ばれていないことを妬んでいるからそう呼んでいたんだと思う。

円堂が実は死んでいないということを誰よりも早く雷門に言うべきなのに黙っていた。そのかわり慰めの言葉をかけた。

円堂の遺品整理は雷門だけがやることになっていたが、無理矢理俺にもやらせてもらうことにした。

「雷門、これからどうする」
俺は円堂のオレンジいろのバンダナをつかんでいた。
なんとも意地悪な質問をしてしまったのだろうか、雷門はしくしくと泣きはじめた。

すまなかった、と声のトーンを一つ下げて謝り、泣いている雷門の肩を抱き寄せた。雷門の瞳からは涙が溢れていて俺はさらに慰めた。

「豪炎寺くんは優しいのね」
「そんなんじゃない・・・」
謙遜とかじゃなくて本心だった。

雷門の側にいたかった。でも無理だった。それは円堂がいたから。
今は違う。円堂はもうここにはいない。俺が雷門を抱き締めてもいいんだ。慰めとか同情とかそんな理由じゃなくて自分の欲望を叶えたいために抱き締めた。

「夏未・・・」
俺が雷門を名前で呼ぶことは円堂に対する裏切りを意味していた。

もう一人の自分が客観的に自分を見ているような気がした。その視線はまっすぐに俺を見ていて怒っているようだ。




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