アルファとベータ

可哀想に、とベータはアルファを見て不覚にもそう思ってしまった。
いつも冷静で感情をあまり見せない彼の苦しんでいる姿は貴重であるが、とてつもなく苦しくつらいことが彼を襲っているところを見るのはもう嫌だった。
そこで引き返せば良かったものの引き返してもアルファが苦しんでいる今の現状はどうにもならないということをすぐ理解したベータは、彼を助けるべくとんでもないことをしようとしていた。
アルファを脱獄させようとしたのだ。それはアルファのためではなかった。苦しんでいるのを見るのは気分が悪いためだった。



「久しぶりの外の空気はどうですか?」
にっこりと余裕の笑みを浮かべる。
「なぜ・・・こんなことをしたんだ」
「しちゃだめでしたか?だったら戻してあげます」
「・・・・・・・・・いや、駄目ではない。助かった」
早くここから逃げないと追手が来ちゃいますよーと言い、ボールを手渡すとアルファはありがとうと呟いてボールと共に消えた。多分こことは違う時間軸に行ってしまったのだろう。
彼なら彼のいる時間軸の手がかりとなってしまうボールをすぐに破棄しただろう。移動した時間軸によってはもうアルファはこちらに戻ってこれない。
「アルファ」
ベータは声に出さずアルファと口を動かした。
これで不愉快な気持ちは消えた。何度もベータは自分にそう言い聞かせた。すっきりしないというか、もやもやしている。苦しんでいるアルファを見たくないだけ、という感情だけだったはずなのに。




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