天城と香坂

「...優勝おめでと」
香坂は息を吐くような自然さで天城にそう言った。長いまつげが分かるのは香坂が涙を流して目を閉ざしているからだ。香坂はそのまま天城の広い胸元に体を密着させた。
「香坂...ありがとう...」
天城は正直抱きついてきた香坂より、心のなかにいる親友、まほろの事のほうが気にかかっていた。まほろは香坂に好意を抱いているのが分かるほどよく彼女を見ていたのだ。
この場にまほろがいたらどんなに恐ろしいことか。天城にたいして怒りをぶつけることはありえないが、もしかしたらまた思い詰めて一人になってしまうかもしれないと天城は心配した。まほろはどんな目で自分を見つめるのかも想像しただけでぞっとする。
「天城くん...私ね...」
はっと息を飲んだ。聞いちゃいけない、聞いちゃいけないんだ、知らないふりをしなくてはいけない、天城は香坂が次の言葉を発するまでの短い間に何度も頭のなかで唱えた。
「こ、香坂...」
こうさか、それいじょうはいっちゃだめだど。天城の口からは何も言葉がでてこない。少しだけ、本の少しだけ。いや少し以上に期待している自分がそれを阻止している。天城はその自分に負けた。
「私、天城くんが...好きなの」




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