風丸と春奈

俺たち三年生の部活の活動がなくなった途端、音無と会うことが少なくなった。
三年生と二年生の校舎がそれぞれ違うのもあるけど、部活がなくなったことによって会う口実ができなくなったのが大きいと思う。
音無は相変わらずでニコニコしながらマネージャーを頑張っている。声をかけようと思ったこともあるけど、その時音無は他の男子部員と楽しそうにしているのを見てやめた。その男子部員は俺の知らない奴だった。ちらりと音無が俺のほうを見てきたような気がしたが、気のせいだったに違いない。

「どうしたんだ、そんなに険しい顔して」ってここ最近良く言われる。俺は受験のことで悩んでるんだ、って流した。そういういいワケしても分かる奴には分かっていたんだと思うけど。
遅くまで学校で勉強してる日が時々あるから帰りに音無でも誘おうか、と思いつつ誘えない日々が続いた。ただ単に自分に勇気がなかったんだ。もし断られたらどうしよう、とか他の男と一緒に帰ろうとしている姿を見てしまわないか、とか。
……さてと、今日もサッカー場の様子を見てから家に帰るとするか。やはり、見るだけだ。音無を誘うことなんてできやしない。

試合形式の練習が終わった後のパス練習をしていたときぽーんと勢い良く俺のところにボールが来た。そのボールはちょうど良く俺の腕にすっぽりと収まった。
久々にボールでも蹴ろうか、とボールを地面に置こうとしたとき聞き覚えのある声が聞こえた。音無だった。
「あ、先輩だったんですか!」
俺はボールを音無に渡す。
「ああ、なんとなく気になってな」
音無はニコリと笑って俺の手を引っ張った。先輩、ちょっと顔出していきませんか?音無が折角そういってくれたけど俺は断った。なんとなくだった。
「そうですか」
音無は肩を落として残念そうに言った。

このままいつものように帰ろうと思ったけど、音無にひどいことをしてしまったから謝りたかった。部活が終わる時間まで校門の近くで待っていた。
しばらくすると音無が他のマネージャーと一緒に歩いてくるのが見えた。やばい、音無を呼び出すのは少し恥ずかしい。まるで告白するみたいで少し気後れする。
「風丸先輩!」
このとき音無が俺の名前を呼ばなかったら俺は音無に話しかけることなんかできなかっただろう。
「音無、さっきは悪かった」
「いえいえ、いいんですよー。あ、そうだ。先輩に用事があるってお兄ちゃんが呼んでたんですよ。きてください」

音無に呼び出せれて嬉しい気持ちもあったが俺を呼んだのが鬼道というのは少し残念だ。それにしても鬼道はどうして俺を呼んだのだろうか。あいつは塾に通ってて忙しいはずだが。それに音無の態度も気になる。少しうつむいていてて早歩きだし、それにさっきから一言も声を出してない。
そして音無は俺を教室にいれた。そこには鬼道がいるようすもなければ、俺たち二人以外の人影も見当たらない。
「なぁ音無、鬼道は」
音無のところを振り返ったときだ、振り返った瞬間に音無が俺の目の前にいたと思ったら唇と唇が触れていた。すぐに音無は俺から離れたが目をそらして分が悪そうにしていた。
「すみません、ずっと好きだったんです」
音無は目に少し涙をためていたから手で脱ぐってあげた。
「俺も、好きだ。・・・・・・先、こされちゃったな」
音無にされたよりも長く、そして甘ったるいキスをお返しにした。腰に手を回すとびくりと動いたのが分かる。その手を背中、首、頭と撫でるようにゆっくりと順番に触れる。キスを終えると俺は音無の無防備な耳元を吸い上げた。赤い痕が残ってしまったがまあいい。
「せんぱい、」
「ごめん音無、俺本当に好きなんだ」




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