土門と秋

※オチなし



秋がずいぶんと顔を赤らめていたもんだからどうしたんだって聞いた。秋は俺の目を上目遣いで見て、土門くんのばかと一言だけ言ってまた目をそらした。それがすごく可愛らしかった。
ごめんごめん、と俺はさっきまで握っていた秋の小さい手を離した。手、握って悪かったと言うと今度は秋が俺の手をつかんできた。ぎゅって音がしそうな感じで。土門くんのばか、またそう言われた。女の子って思ってることと逆のことを言うんだから面白くて可愛い。
「これからどこに行く?」
「んーと、映画を見たいかな」
「じゃあそれに決定」
秋が前々から見たかったらしいある映画を見たんだけどそれがとんでもないくらいつまらなくてアクビを何回もしそうになった。俺がアクビを我慢している中、秋はうっとりとしたような目で映画を見ていた。つまらないからと言って別に損したような気はしなかった。秋が手を何度も強く握ってきてくれたからな。
映画を見終わったあと、秋が面白かったなぁって呟いたからあぁそうだな、って言った。嘘だぁ、と秋に言われる。はい、その通りです。
「あーぁ、土門くんに悪いことしちゃったなー」
「なんでさ」
「だって、さっきの映画つまらなかったんでしょ?」
「う、・・・・・・少しな」
「ほらね。今度は私が土門くんの行きたいところについていくよ、だからさっきのことは許してね」
秋はにこりと笑った。別にそんなことは気にしてないんだけどなー。まあ秋にそんなことを言っても秋は納得しないからここは秋の言うとおりにしておくのが正解みたいだな。

秋を自分の家に連れてきた。そういえば俺の家に秋がくるのはすごく久しぶりだ。家に誰もいないなんて好都合だ。自分の部屋に入れてベッドに座らせた。ゲームを渡すと口元を緩ませた。これ好きなんだよね、秋はそう言って早速電源をつけた。
「対戦しよ」
秋は俺の腕を引っ張って催促した。俺は秋に勝てるような気がしなくてあんまし乗り気じゃなかったけど、秋の頼み事とくれば断るわけにはいかない。そして俺は見事に完敗してしまうことになる。
俺は少し飽き始めたから電源を落としてぽいっとベッドの上に投げ出した。秋も電源を落とす。
「ちょっと疲れちゃった。横になってもいい?」
いいよ、と言う前に秋はすとんとベッドに仰向けになった。秋は天井をぼんやりと眺めている。
土門くんてさ、確か私と同じ高校に行くんでしょ?秋は確かめるように聞いてきたけど多分何となく分かっていたんだろう。そうだよね、と消えそうな声で聞いてくる。
「......」
「............」
「......どもんくん」
俺はゆっくりと目を閉じて首を横に軽くふった。目を開けると秋はぽろぽろと涙をこぼしていたもんだから心臓がドキリとはねた。俺はびっくりしたもんだからどうすればいいのか分からなくて秋の頬や目や耳に軽いキスをし、秋が泣き止むまで続けた。
秋はすぐに涙をひっこめたけれど、俺と目を合わせようとしてくれない。秋はゆっくりと起き上がると急に泣いてごめんねと言ったがまだ俺と目を合わせない。俺は秋の肩を抱いて俺が悪かったよと言った。秋の肩が大きく動いているような気がした。
秋が落ち着くと俺は秋を抱きかかえたままベットに寝かせてそのまま覆いかぶさったまま唇にキスをした。このまま秋の上着を脱がそうかと考えたけど思いとどまってキスし続けた。
「ずっと、このまま、時間が止まっちまえばいいのにな」
唇を離してそう言った。




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