佐久間と春奈
どうしてこんなことに、と俺の女は呟いた。
俺の女ってのはかっこつけすぎか?彼女って言った方がしっくりくる。
「いいじゃん、流れに身をまかせちゃおーぜ」
「そ、そ、そんなことできません!」
と、言って手をぐいと伸ばして俺をこれ以上近づけないようにした。
「いいだろ?俺らコイビト同士なんだからさ」
「わ、私佐久間さんと付き合ってる覚えはありませんっ」
否定しているつもりみたいだけど、顔は真っ赤。それじゃあ説得力がないぜ、お嬢さん。
「うそつかなくてもいいだろ?お前、俺のこと好きなくせに」
図星なのか目を見開いて見つめられた。
そしてへなへなと力を抜いていた。
「いつから、...知っていたんですかぁ...」
「分かんない、けど、両想いには違いないだろ?だからいいだろ?」
俺が首元を触ってやるとびくりと体を動かして、硬直させた。
「...でも、お兄ちゃんが...」
鬼道のことか。
一番の難関を忘れていた。
俺は馬鹿だなぁ、と後悔し、さすがにアレはできなかったから今日はキスだけにしておいた。
鬼道がいないまた今度におあずけ、か。