錦と茜
「山菜!これをあげるぜよ!」
「どうして私に?」
「理由なんかないじゃき、だた山菜にあげたかったからじゃき」
「そぅ。・・・でも嬉しい、ありがと」
茜は錦からある人気キャラクターのキーホルダーを貰った。
突然渡されたものだから最初は何を貰ったのか把握できなかったが少しずつ冷静になってくると、それは茜の好きなキャラクターだと言うことに気付いた。
「ねえ水鳥ちゃん、私ね錦くんからキーホルダー貰ったんだー」
「へー、あいつが?なんで?」
「よく分からないんだけど、ただ私にあげたかっただけなんだって」
「・・・へぇ、それはそれは」
茜は指にキーホルダーの紐をからめてくるくると回して水鳥に見せた。
水鳥はなるほど、とにやにやした顔でなんどもそう言った。
「それでね、錦くんにお返しした方が良いのかなって思って…」
「あー別にアイツなんかにお礼なんかしなくていいよー」
茜は首を大きく横にふって、やだ、渡すもん、と言い水鳥を見た。
じゃあ、聞くなよな、水鳥はそう呆れた。
「錦くんって何が好きか分かる?」
「多分、あー絶対、サッカーだな」
「違うくて何かあげたいの。だから何か形のあるものがいいの」
だん、と茜は強く机をたたく。
「じゃあサッカーボールでもあげればいいんじゃね?」
「……んー、どうしよう…。」
水鳥はクスクス笑って茜に聞いた。
「ねぇ、なんでさー錦のためなんかに悩んでるの?」
「なんでって…。お返ししたいから…」
「ふーん、あいつへのお返しでこんなに悩むんだー、へー?」
なんで?好きだから?と水鳥はさらに茜を追い込んだ。
「ち、違うもん…、別にそんなんじゃないもん…」
ううぅ、と呻きながら茜はごつんと机に額をぶつけた。
(あと、一押しだな)
にやり、と水鳥は笑う。