無題
2012/06/10 09:14

剣城くんに好きだと云う私の気持ちを伝えることができて本当に良かった。気持ちを言わずに後悔する、ということはなんだか惨めで逃げるような気がしていたから。
剣城くんは瞳を揺らしながら少し考えさせてほしいと言った。剣城くんはこのとき何を考えていたのだろう。
それから一週間くらいたったとき剣城くんから付き合おうという主旨を綴ったメールがきた。嬉しかった、だけど少しだけ不安もあった。それは、彼が妥協しているだけじゃないのか、私のことは好きじゃないのでは、ということであった。
付き合い始めたもののどこかにデートしたり、夜中までメールしたりとかありがちなことはせずいつも通りに過ごしていたものだから私は少し退屈をしていた。
それと部活のときもただのマネージャーであったときと何ら変わらない反応でもどかしく思えた。
こういうわけで私は剣城くんを呼び出してもっと恋人らしくしようよとイライラしながら言ってしまった。言った直後に剣城くんが小さく舌打ちをしたのを覚えている。
そう言った次の日から部活の帰りに軽くふれ合うキスのようなものをしたり、夜遅くまでメールをしあったり、知り合いの誰にも見つからないようにこそこそと隠れるようにデートしたりした。
その間私は少しも満足できなかった。これほどまでに充実した青春をおくっているにも関わらず。
剣城くんは一度も私に好きと言ったことがなかった。そしてキスするにもデートするにもどことなく演技をしているようにみえた。この恋に真剣だった私は剣城くんに少しずつ腹がたってきてしまってメールでは愚直ばかりをこぼしていた。その度に剣城くんは悪かったとかごめんとか謝ってくれた。剣城くんにとってめんどくさい女だったのかもしれないけど、私は剣城くんに本気の恋をしていた。
いつもは剣城くんがしているデートの誘いを私がやった。なぜか最近メールが来なくなっていたから気になっていたし、少しだけ二人で話をしてみたかったのもある。
メールを送ったが返事がしばらく返ってこない。痺れをきらして日付と場所をメールで知らせることにした。
そしてデートの日、私は剣城くんに送ったメールの場所にたって待っていた。いつものようにお洒落をして。
十分、二十分待っても剣城くんはこなかった。たくさんの人が通りすぎていくのを見ているのも飽きてきた私はメールを送った。でも返ってくることはなかった。
一時間半くらい待ってもこなかったから私はしょんぼりとして帰った。長く立ち続けていたから足が少し痛くなっていた。
次の日、天馬といつものように通学して話をしていたら天馬が嬉しそうに剣城くんと出掛けたことを話した。昨日、天馬のところに急に誘いのメールがきたそうだ。
学校に行き早速剣城くんを問い詰めた。
「どうして来てくれなかったの」
剣城くんは携帯が壊れれて、と嘘をついてきたから天馬の言っていたことを話すと一瞬表情が崩れて黙りこんでしまった。どうして、私のこと嫌いになったの、と問うと剣城くんはそうじゃないと言った。少し疲れてきたんだ、と呟いたのを聞いて私は火照ってしまい怒鳴りそうになった。
少し距離をおこうっか、剣城くんはどうも私のことを好きではなかったようでもう別れたほうがいいと思ってそう言ったら、剣城くんに謝られた。別れないでくれと彼は言ったけど、私はいいよとは言えなかった。だめだよ、とも言えなかったけれど。
しばらくは付き合う前のような関係が続いていた。デートもしなくなったしメールもそんなに頻繁にしないし、キスすることもほとんどなくなったけど、全くではなかった。剣城くんが私にキスしてとせがんでいた。
一人で出掛けたときのこと。剣城くんを見つけたから少し注目していると誰かと手を繋いでいるのが分かったがそのまま後ろを向き歩いてきた方向から反対の方へ私は逃げていくように歩いてった。
心臓がばくばくと動いている。まさか剣城くんが天馬と手をつないでいるなんて......、しかも私には決して見せない笑みをして。

「ごめん、俺どうしても女を好きになれなかった。付き合えば女を好きになれるかと思ったんだ......。......ごめん」
もしかして同性愛者だったの?天馬のことが好きなのに私と付き合ってたの?剣城くんに聞くと、どうやら私のことを利用していたということを答えた。
キスをせがんできたもの、デートに誘ったのも全部女の子を好きになろうと頑張ってしていたことだったらしい。
私じゃなく他の子が剣城くんに告白していたら、きっとその子を利用していたんだろうね。
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