そして、騒動は終結する……

その頃マディンは長老の家でマドリーヌと娘のティナを守っていた。ティナを心配そうに見つめていると、マドリーヌが凛とした瞳をマディンに向けて一度頷き安心させるように『大丈夫です』と声をかける。
その様子に頷いてティナをマドリーヌに任せ、マディンは長老と話をしにいった。
長老はここまで攻め込まれたのだからと、最後の手段を考えていたのだった。

「仕方ない……最後の手段だと思っていたが……」
「もしや……封魔壁」
「そうじゃ。嵐を起こし、すべての異物をこの世界から追い出し結界のゲートに封印の壁を閉ざす」
「…………」
「その術を唱えることが出来るのは、幻獣でも特殊な血筋を持つ者のみ。いまや、その術を唱えることが出来るのもわしだけになってしまった……」
「しかし、そのお身体で封魔壁の魔法を使えば…」
「死ぬかもしれん。わしが死ねば一生封魔壁を開く事も出来なくなる」
「マドリーヌはそれでいいのか?」

長老の話を聞き、ティナを抱きかかえながらマドリーヌは毅然と言い放った。その瞳は強い意志を示すような瞳だった。

「もう向こうには未練がありません」
「では、行くとするか。それしか手は無いだろう」

マドリーヌの瞳と言葉に長老は一つ頷き、覚悟を決めたように低く響く声で行くことを告げた。
マディンは長老に次いで家を出ようとしたその矢先、仲間の幻獣がポツリと本音を零した。

「こうなったのも、あの人間の女の所為かもしれない」
「何を言う!!」
「あの女がヤツらを連れてきたのかもしれないじゃないか」

仲間の言葉にマディンは渋い顔を浮かべながらも諭すように静かな声で抗議をした。

「……いい加減にするんだ」
「いやっ!あの女もヤツらと同じだ。その内俺達を利用して……」
「しまった!!」
「マドリーヌは、ティナを連れて行ったよ!」

疑心暗鬼になっている幻獣の話を聞いて、マドリーヌは悲しみを堪えるように口許を手で隠し、長老の家を飛び出していってしまった。それを見たマディンは瞳を見開き慌てて後を追う。
そして、ゲートの前には長老が佇み術を発動させていた。

「危険じゃ!何処へ?……うぐぅ」
「マドリーヌが……」
「まさか!しかし、もう駄目じゃ。すでに封魔壁の魔法は始動した。二度と戻れなくなるぞ!」

長老の警戒を聞きながらもいても経ってもいられずマディンはその先へと向かってしまった。背中に長老の声が響くも、今のマディンにはマドリーヌとティナが大切だった。

目の前にはガストラの兵士たちが嵐に飛ばされぬよう踏ん張っているものの、力及ばず飛ばされていってしまった。ガストラも口惜しげな表情を浮かべ飛ばされていった。
そして、その奥にはマドリーヌの姿があった。

「マディン…私はあの人達の仲間なんかじゃ…」
「分かってるさ!」
「ありがとう……」
「戻ってくるか?」
「えぇ……」

マディンがマドリーヌの手を取り戻ろうとした矢先、マドリーヌの手の中からティナが滑り落ちそのまま人間界へと飛ばされていってしまった。それを見たマディンたちは瞳を見開き娘の名を呼ぶ。

「「ティナ!」」

追いかけようとするマドリーヌを追って、マディンも人間界へと飛ばされていってしまった……。
こうして魔封壁によって幻獣界と人間界のゲートは堅く閉ざされてしまった。

マドリーヌがティナを守るように人間界にて倒れているのを傍で倒れていたガストラが見つけ、ティナをマドリーヌから奪ってしまった。
『止めて』と告げるマドリーヌには目もくれずティナを抱え、追いすがるマドリーヌを一蹴し、その場を去って行ったのだった。




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