儚き花の行方
死の棘



目に毒と言いたくなるような紅を身に纏って、グレルはその場に集まっている皆に向かって欠伸交じりに話しかけた。

「ふぁ…ぁふ。無茶するからよ。」
「グレル・サトクリフ!」
「はぁーい!…ふんっ。あんまりやんちゃすると、どんどん深く食い込んでっちゃうわよ?死の棘がねぇ」
「死の棘?」
「…アラン先輩…しっかり」
「そうっ!彼は死の棘にやられてしまった。本来よほどのダメージを与えられなければ死なないはずの死神を…ゆっくりとしたストロークで執拗にじわじわと死に至らしめる…あまーい棘にねぇ。」
「グレル先輩、説明はそのくらいで結構。…そろそろその煩い口を塞いでもらってもいいですかね…?」
グレルの説明を聞き流しながらも情報をシエルたちに聞かせるグレルに苛立ち、ウィンは話を止めさせようとした。しかし、先ほどの説明でシエルとセバスチャンの二人は興味が沸いてしまったのか瞳を細めながらウィンたち三人を見つめていた。

「死の棘……」
「ほら、アタシたち魂狩りまくってるじゃない?死んでいった人間たちの呪いだなんて噂もあるわ」
「っく…っはぁ…」
「魂を狩る場に漂う、死者たちの憎悪に満ちた叫び。それがやがて、鋭い死の棘となり心臓に到達する…」
「ぁっ…がはっ…はっ…」

ウィンの制止の言葉も聞こえないかのようにグレルはそのまま説明を続けた。その間にもアランを苛む死の刺は疼き鋭い痛みをアランへと与えていった。その様子に眉間へと皺を刻み込み聞いていたウィンはエリックを見つめた。エリックはというとアランに付き添い苦しそうなアランの手を握り、声をかけていた。

「苦しいか?どこが痛む?」
「…グレル先輩…いい加減にしろっ!」
「痛いっ…ぁん、もうウィンちゃんったら…そんなに続きがイヤなの?」
「そういう問題じゃない!アンタ、何悪魔に情報与えてんだって言ってんの。さすがの私にも、我慢の限界があるんだけど!」
「おっと、さすがに此処ではダ・メ。アタシ、説教と攻撃を受けるのはセバスちゃんだけって決めてるのよねぇ」
「んなもん知るか!とりあえず黙れっ!」

グレルの滑るような情報の羅列についに我慢の限界が来たのかウィンはグレルに歩み寄り回し蹴りを食らわせた。続いて説教モードに入り、グレルへ激しい突っ込みを入れ続けていた。しかし、グレルは気にする風でもなくまったく聞く耳を持たなかった。
一方、セバスチャンたちの方はというとアランたちの様子を見て何かを企んでいるように瞳を細め、シエルへと言葉を向けた。

「……彼らを屋敷へ運びましょう」
「僕の屋敷に?」
「籠の鳥は…鳴くことを忘れる…」
「何か考えがあるようだな、セバスチャン?…いいだろう、屋敷の使用を許可する」

シエルの言葉に瞳を丸くしウィンは警戒をするように二人を見つめ、いつでも攻撃が出来るように片手を死神の鎌へと掛け、どうなるかを見つめていた。そして、シエルの言葉にグレルが反応し、至極嬉しそうにはしゃぎセバスチャンへと話しかけ抱き着こうとするもののいつもの通りに避けられ、グレルは地面と口付けする羽目になった。

「え?セバスちゃん助けてくれるの?」
「なりゆきですから……」
「あぁん、そんな寛大で博愛精神のあるセバスちゃん。何だか新鮮〜!!」
「…みっともない…同じ死神だとは思いたくない」
「ウィン、それには同意だぜ。」
「…ですよね…っ…cazzo…」
「ウィン、スラング出てるぞ」
「あ、すいません……」

抱き着きに失敗し地面に伏しているグレルに目もくれず、セバスチャンはアラン達三人の元へと歩み寄りこれからどうするかを問い掛けた。

「さぁ、お三方いかがいたしましょう?」
「敵陣に招き入れられる…面白いじゃないか。」
「アラン先輩!」
「アラン、考え直せ!」
「でも、これが事件解決につながっ……」
「では、ご案内致しましょう」

こうしてウィン達三人とグレルを連れて、シエルは自分の家である豪邸へと足を向けた。

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