儚き花の行方
かごの鳥…



意識が次第にはっきりしてきた所でウィンはゆっくりと瞳を開けた。そこには自分を取り囲む鳥籠のような檻があり、入口は鍵で施錠されていた。
ウィンが動こうとするも腕は後ろ手に拘束されており、上手く身動きが取れない状態だった。そこにウィンを連れ去った張本人であるドルイットが、見ていて苛立つほどの笑顔を浮かべて歩み寄ってきた。

「やぁ、ご機嫌はいかがかな?美しい雛鳥?」
「…最悪よ、この変態。」
「おやおや、口のきき方がなっていないねぇ。レディとして失格だよ?」
「煩いわね、失格で結構。貴方に認めてもらわなくても良いわよ」
「それは…エリック君にも?」
「……エリック先輩には関係ないでしょ」

にこやかに話しかけてくるドルイットに苛立ちを隠さずに返答をするウィンを見て、徐々に化けの皮が剥がれてきたのか手に鞭を持ち籠の中へと入ってくる。
そのドルイットを見て、ウィンは動きづらい身体を引き摺るように奥へと逃げるも円形状の檻の所為か上手く逃げられず檻の端まで追い詰められてしまった。

「まぁ、いいさ…君が今ここにいる瞬間も、エリックくんが舞台を盛り上げてくれているんだからね」
「っ…それ…どういうこと?」
「ふふ…君は知らなくてもいいことだよ…だって、ここで可憐な声を上げて物言わぬ人形として、この私に永遠に愛でられていくのだから」
「っ…最っ低ね、貴方…」

ドルイットの言葉を聞いて嫌悪感をあらわにしたウィンは眉間へと皺を寄せて睨みあげる。しかし、そんなウィンにも動じずむしろ楽しそうな表情を浮かべて鞭をまとめていた指を離し解いて、軽く腕を上下させ鞭特有の鋭い音を響かせた。
その音にウィンも反射的に身体を強張らせてその音を聞いた。そのウィンの反応をみたドルイットはさも楽しそうに表情を綻ばせてウィンに近付き顎へと手を添えてしっかりと顔が見えるように上へと上げる。その仕草、そして相手の異様さを感じ取ったウィンは先ほどよりも更に嫌悪感を露わにし何とかしてこの拘束を解こうと足掻いた。

「ふふ、雛鳥?そんな事をしても無駄さ……あぁ、その可愛い表情…その細く白い喉からどんな可愛らしいさえずりが聞けるのだろうね」
「っ…寒気が走るわ…いい加減に黙りなさいよ!」

ドルイットが言い終わらないうちにウィンはスカートも気にせず下段蹴りをドルイットに仕掛け転ばせようとする。しかし、スカートであるが故に可動範囲が限られてしまいダメージを与える事が出来なかった。ドルイットも軽くよろけはしたものの笑顔に黒さを含めて再度ウィンに近付き鞭で背中へと叩き下ろした。痛みに軽く呻き、ウィンは決して声を漏らさないようにと唇を噛みしめてドルイットの鞭に耐えていた。

「っ…本当に…とんだお転婆娘…だねっ!」
「ぅぐっ…ぃっ…」
「おや?啼いてくれないのかい?美しく可愛い声を聴かせておくれ…雛鳥っ!」
「ぁぐっ!っは…はっ…」

痛みによって目尻に涙が溜まりその水滴が悔しさからあふれそうになったその時、ドルイットの背後に黒い影が武器を片手に迫っていた。

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