儚き花の行方
更なる来訪者



物陰から現れたセバスチャンの手には銀のナイフとフォークが握られていた。それが、セバスチャンの武器である。それを構えながらエリックへと一歩ずつ近付いていく。
セバスチャンから紡がれる言葉にアランは茫然と二人を見つめ、その紡がれる言葉を聞いていた。

「他の何を犠牲にしても、ただ一人のために己を滅ぼし、どんな悪事にも手を染める……」

その言葉を聞きながらもエリックはセバスチャンからの攻撃を避けながらも、防ぐ。
武器を持ってからのセバスチャンの動きは尋常ではなく、エリックも攻めあぐねているようだった。
ナイフを防いでその勢いのまま再び背中合わせになるエリックにセバスチャンは言葉をかける。

「そんな貴方に…」
「っ、く……」
「私のこの姿勢を理解していただけると思っていました」

二人の攻防をアランは身を呈して止めようとする。しかし、二人ともアランを避けて続けてしまう。そんな中、更なる来訪者が訪れた。

「ちーっす、お疲れ様っす」
「エリック・スリングビー、全く…驚きましたよ。ただの解雇では済まされませんよ。貴方は堕ちた死神、死神派遣協会の登録・所属、存在を抹消させていただく」
「待ってください!話を!!」

その場に現れたのは、仲間であるロナルドとウィリアムだった。二人は魂の収支、そして極端に死亡予定者が増えたのに違和感を覚え、その場所として記載されていたこのクリスタルパレスへと来たのだった。
ウィリアムから言い渡されたエリックの処分にアランは慌てて異を唱えるも、それを遮るかのようにセバスチャンが言葉をかける。

「お待ちください、この方の始末は私が坊ちゃんに仰せつかっていますから…貴方がたに役目を奪われてしまっては、命令が遂行できないのです」
「悪魔…これは、死神派遣協会の話。邪魔はさせませんよ」

セバスチャンの言葉にウィリアムは邪魔をされては困ると自分の死神の鎌を突き出し攻撃を仕掛ける。入り乱れての混戦を見てグレルは羨ましそうに見つめ、自分の鎌を握って参戦し始めた。その様子を見てシエルは鬱陶しそうな表情を浮かべ一言つぶやく。

「あぁん、ずるい〜。アタシ抜きで熱いバトルなんて!アタシも混ざる〜!!」
「何なんだ、あの死神たちは。何をまごついているセバスチャン!」

セバスチャンを急かすシエルだったが攻撃の手が自分近くに迫ったのを感じ、メイリンに手を引かれ逃げ出そうとするも先回りされたエリックに人質に取られてしまった。

「おぉっと!こういうのは趣味じゃないが、とりあえずシエル坊ちゃんは人質に取らせて貰うよ?」
「っ、離せっ!セバスチャン!」
「坊ちゃん!」
「エリック!」

そのまま、シエルはエリックに連れて行かれてしまい、即座に後を追うアラン。
しかし、セバスチャンの前にはロナルドとウィリアムが立ちふさがった。その二人を相手にナイフを煌めかせるセバスチャンにウィリアムたちは臨戦態勢で迎えた。

「追わなくていいのですか?」
「すぐに追いつきますよ。いい機会です、ロナルド・ノックス。この害虫に止めを刺しておきますよ」
「へ〜い、パパッと終わらせておきましょう。俺、残業しない派なんで!」

そう言ってロナルドは芝刈り機をセバスチャンに向かって突っ込ませていった。しかし、セバスチャンもすぐさま避ける。それを見てロナルドは芝刈り機を振り回しセバスチャンの顔を狙って攻撃を繰り出す。それをも避けるセバスチャンに今度はウィリアムが高枝切り鋏を突き出した。それに対し、身体を捻ってかわすセバスチャン。
一対二の攻防もグレルや使用人たちの邪魔が入ってしまい、興ざめしたのかウィリアムはロナルドを連れてエリックの後を追ってしまった。
それを見てセバスチャンも後を追っていく。

「勝負はお預けです。ロナスドノックス、行きますよ」
「私は坊ちゃんを追います、貴方達はお屋敷を頼みます」
「「「はいっ!!」」」
「全く、あれほど動かないよう言ったのに。相変わらず攫われるのがお好きなようですね」

使用人たちに屋敷を任せたセバスチャンは不機嫌そうに愚痴を零し、エリックを追った。

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