儚き花の行方
準備…万端?



「っ…ぅあっ……」
「ほぉら、ウィンちゃん。もっと力抜かなきゃ…」
「っ、はぁ……」
「そう、ゆっくりね?ほぉら、どんどん締まってるわよぉ?」
「くっ、苦し…グレルせんぱっ…」
「大丈夫よん、すぐに楽になるから…ほら、息吸って…」
「すぅ…っはぁ…」
「ん、お利口ね…ウィンちゃん?とっても上手よ?さぁ、ラストスパート。全部アタシに委ねちゃいなさい?」
「…いった!ちょっと、乱暴にしないで下さいよ!もう少し優しく…‥」
「あらぁ、もぅこんなに締まってる…いいわぁ」
「言わないで下さいっ!恥ずかし…」
「恥ずかしがることないじゃない、あと少し…よ?」
「い、から……もう最後までっ……」
「最後まで?ウィンちゃん…そんなんじゃラストワルツは踊れないわよん?」

そう言いながらもウィンがドレスを着る手伝いをグレルがしていた…決して如何わしい事をしていた訳ではないのでご安心を。
クリスタルパレスで開かれるオペラに参加する際にスーツで行こうとしたウィンをセバスチャンやメイリンが止め、ドレスを着ていくようにと説得しシエルからドレスを借りて潜入することとなった。
因みにウィンのドレスは身体のラインを際立たせるようにシンプルなクリーム色の生地。そしてヒップラインや胸元にレースをあしらった物で、スリットの部分はプリーツになっておりそこの生地は緑色と凝ったデザインをあしらってある。
先ほどのやり取りは、ウィンのコルセットを締めていたのであった。
因みにグレルは黒い生地に裏地が象徴となる紅。胸元と足が見えるきわどいドレスを身に纏っていた。

「あ〜ぁ、これだからガキは…もっとガバーッっと、開くところは開かないと…ねぇ?」
「…アンタみたいに露出狂の趣味はありませんので…ご心配なく!」
「お前ら、何をやっている。うるさいぞ……」
「っ、シエル…ファントムハイヴ…よね?」

そして、同じく潜入するシエルは薄いピンク色の生地に髪をウィッグで伸ばしツインテール。そして普段つけている眼帯もピンク色へと変わっていた。(俗にいう駒鳥シエルの恰好)
その恰好を見てウィンはポカンと口を開け、化けるもんだなぁとしみじみ実感してしまったのであった。
そして、ドレスを着たグレルはテンションが上がっているのか聞いてもいないのに、服言葉まで披露し始めた。

「この赤のドレス、華やかでしょう?因みに、赤のドレスの服言葉はぁ…灼熱の、誘惑DEATH!」
「服言葉?」
「まぁ、いわゆる花言葉みたいなもんよぉ」

一人舞い上がるグレルを尻目にウィンは自分の恰好は大丈夫かと鏡を見ながらチェックを始め、メイドのメイリンと使用人のフィニはシエルとウィンを見て満面の笑みを浮かべながら二人を褒めた。しかし、バルドだけは違いシエルの姿を見て涙を流していた。理由としては、自分の姪っ子を思い出していたからなのだが…。

「いやぁ、でも坊ちゃんとウィン様。とってもお似合いですだよぉ」
「本当本当!二人とも、すっごく綺麗だよ!」
「ぐすっ…っはぁ…」
「バルドさん、どうかしたの?」
「いやぁ…しばらく会えていない、姪っ子を思い出してなぁ……坊ちゃん、ちょっと頭、撫でさせて「断る!!」うん、知ってた…知ってたよ…」

そんなやり取りを見てくすくすとウィンは微笑みその暖かさに不安で重かった心が少しだけ軽くなるような感じがした。
しかし、シエルはこの格好に不満なのか不機嫌そうな表情を崩すことはなかった。セバスチャンに対し文句を言うものの、受け流され渋々という体で受け入れていたのだった。

「まったく…女だけではなく子供も入場できるのだろう?なら僕がわざわざ女装せずとも……」
「おや、坊ちゃんは子供ですか?」
「…子供ではない」
「なら、男性は同伴者がいれば入場できる。私と坊ちゃんがペアを。ウィンさんとアランさんがペアを組むことに……」
「お待たせしました!」

セバスチャンの言葉に納得したように頷いて意気込むウィンと選ばれず落胆するグレル。そんな中にアランの声が響いた。アランはどんな格好をしてくるのかと少し期待しながら待っているものの、ウィンのその期待は裏切られることとなってしまった。

「えっ…ア…ラン…先輩?」
「皆さん、準備は整いましたね?行きましょう!!」
「ちょっと待った!!何でアラン先輩女装を?」
「そうよぅ、なんでアンタまで女装する必要があんのよぅ!」
「これは、エリックと話さなければ…その為なら、どんな屈辱でも…甘んじて受けてみせる!」
「ストーップ!!アラン先輩は私とペアだったはず、ですよね?もし、アラン先輩がその恰好なら……私、男装しますか?」
「あ、いや…それは……」
「でしょ?…分かったら、早く着替えてください…ね?」

ウィンの笑顔が凍りつきアランに優しく声を掛けてはいるものの、オーラが絶対零度まで下がったのをアランも周りにいる全員が感じシエルでさえも身震いし、アランも無言で首を縦に振ることしかできなかった。


そんなこんなで女装していたアランも普段のスーツへと着替え準備が整い、ファントムハイヴ一行はクリスタルパレスへと向かったのであった。
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