『名字名前さん 職員室、土方先生のところまで、来てください。』
こちらを見る目が少し冷たい。いつも、同情の目でわたしを見る。べつに同情なんかしてほしいわけじゃないのに。正直、同情なんてものはわたしに必要ない。
わたしは問題児なのか?
成績も提出物もいいのに、問題児呼ばれる筋合いはない。ただ、学校の授業が嫌いで、テストの日にしか来ないことが、そんなにいけないものなのか。わたしだって、内申に響いてることくらいわかってる。けど、我慢ならないのだ。
「土方先生いますかー?」
タバコをくわえながら出てくる先生。ここはたしか禁煙ではなかったっけ?
「なんのようですか?」
「呼び出して悪かったな、進路決めてもらうために」
わたしを問題児だと言ったのは、紛れもないこの先生。一応、クラスの担任だ。
「進路は決めてません。いまから決める必要ないかと」
「そんなにつっかかんな。ただ決めてもらわねーと、俺が困るから」
こいつが困るのことがわたしになんの不利益があるかというと、ない。
正直に言えば、また利益について考えてるのか?、なんて笑われそうなので、言わない。
「わかりました。進路調査の紙とペン貸してください」
無言で、紙とペンを取り、壁を下敷きがわりに使う。
「出したら、帰りますね・・・はい」
「いま見て平気か?」
「どうぞ。」
「・・・!?ちょ、お前。なに書いたかわかってんのか?」
「わたしは本気なので」
会釈をしてその場を立ち去る。
まだ、慌てている土方先生を残して、ざまあろ、と心の中で呟いた。
わたしの将来の夢は...
土方先生のお嫁さんになることです。