『じんぐーべーじんぐーべーすっずっがーなるー』


今日は十二月二十四日、クリスマスの前日。いわゆる、クリスマスイブである。いつもはコンビニで買った安いケーキでひとり寂しく過ごしているこの日だが、今日は例年とは違う。


『まっかなおっはっなのーとなか』

「あ"ーもうスゲーるさいんだけど!!音痴の上に大音量でもはや公害だよ!!」

『こっ公害!?』


今年は、坂田さん家で過ごすクリスマスです。


『すいません、とうとうクリぼっち卒業かと思うとはしゃいじゃって』

「クリぼっち?なんだ、そいつは」

『…クリスマスに一人ぼっち、ってことですよ』

「寂しいなオイ!」

『そんなこと言って、坂田さんも実は今まではクリボッチだったでしょ?』

「はっ?い…いやっ、んなわけねーだろ!アホか!」


フッ、ストライクか。でもまあ追求すると可哀想なのでやめておこう。


『坂田さーん、飾り付け終わりました!』


キラキラ光るクリスマスツリー、そして白いクロスを掛けて花やら蝋燭やらを飾った食卓を坂田さんに見せる。


「おーう。…こういうことのセンスだけはあるみたいだな」

『だけってどういう意味です』


坂田さんは料理担当、私は飾り付け担当だ。せっかくだから、今年は小さいクリスマスツリーまで買ってきたのだ。


『レースもこんな感じでいいですかね?』

「いんじゃね?」


坂田さんは小さく頷いた。


「本当はここまでやる必要もないと思ってたが、こういうのも悪くねーな」


そう言われると、嬉しくて顔が自然と緩んでしまう。


「さぁ、 晩餐の準備もできたぜ」

『わーい!食べましょう!今年はもう口に何も入れる必要がなくなるくらい食べましょう!』

「さすがに食いすぎだ」


坂田さんが作ったものを白いお皿に盛り付けていく。本当にコックさんみたいだ。


『坂田さん、』

「ん?」

『私、坂田さんの手が好きです。おいしいものを作り出せる坂田さんの手が』

「好きなのは“手”じゃなくて、“俺”だろ?」


坂田さんは笑った。


「俺はなつの口が好きだな。何でもかんでも美味い美味いって食う口。馬鹿みてぇなこと、思ったことを素直に言っちまうその口が」

『“口”じゃなくて、“私”でしょう』


私達はグラスを小さく重ねて笑った。


「メリークリスマス!」



クリスマス
(おせちもお願いします!)
(俺はお前の母ちゃん!?)





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