「坂田君と付き合ってるって、本当?」



毎日、しつこいくらいに繰り返されるその質問。普通のカップルだったらそんなことはないはずなのに、相手が変わった転校生だからって皆面白がっているのだ。



『付き合ってるわけじゃないの』

「でも、最近よく喋ってるでしょ。
お互い呼び捨てだし」

「前なんて、放課後一緒にいなかった?
いつ仲良くなったのよ」

『本当にそういうんじゃないから!』



あーくどい。
私はただ、銀時のピアノを聞いてるだけなのに。


だけど、それは秘密。

私と銀時の二人だけの秘密。



「気をつけてね」

『何を?』

「坂田君て、あんまりいい噂ないんだからさ」

「そうそう。前いた学校は有名な不良校らしいじゃん?」

「喧嘩で退学になったとか、女子生徒との間に赤ちゃんできちゃって、階段から突き落としたとか」

「だから、あんたもいいように弄ばれないようにね」

『まさか。馬鹿馬鹿しい』



彼はそんな人間ではない。それは、一緒にいる私が一番分かっていることだ。

銀時が皆と馴染めないのは、馴染もうとしていないだけなのだ。何にも興味がない。そんなところだろうか。けだるそうな声も目も、そのことを表していた。




ただ、ピアノだけは別。

私が見ていてわかったのは、そのことだ。

銀時はピアノを嫌っている。なのに、特別弾くのが上手いというわけではないとしても、彼の演奏は人を引き付ける力を持っている。

嫌いなのに、弾かずにはいられない。そんな感じがした。




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