!ていうか静ちゃんでない
カキーン
バットにボールが当たる音がした。
ボールいったぞー!とかナイスアシストー!とか1年ボール拾えー!とかいろんな声が聞こえる昼休み。部活のあるものは昼休みも使って昼練に行って練習でもしているのだろう。
そんな中で部活に入ってない俺の昼休みの過ごし方といえば。
「やっぱ屋上だよねー」
周りに誰もいないけど呟いてみる。ちょっと寂しい気もしるけど、うん多分気のせい。
本来屋上は危ないからとかなんとかで解放されてないんだけど、なぜか屋上の鍵を持っている俺は来れるってわけ。まあ何で俺が屋上の鍵のスペアを持っているのかは秘密ということで。
だから俺は友達がいないんじゃなくて誰も呼べないから今周りにいないってわけだ。静ちゃんみたいに友達がいないわけじゃないよ?あんな暴力野郎と一緒にしないでほしいよ。
屋上にはほどよい風が吹いていてゴロリと寝っ転がってみると気持ちいい。周りに人もいないしゆっくり寝れそうだ。校庭から聞こえる野球部達の声もいい感じに聞こえて、少しうとうとしてきたそのとき。
「あ?」
バンッと音がして屋上の扉が開く。そこから入ってきたのはドタチンだった。
「あれ、ドタチン?」
「臨也じゃねえか」
『どうしてここに?』
言ったせりふが駄々かぶり。ドタチンとハモってもなあとか思いながら、スペアキーをドタチンの顔の前でチャリチャリと振ってみた。
「スペアキー。ドタチンも持ってるの?」
「ああ、まあな」
「ふーん、ここのスペアキー持ってんの俺だけだと思ってた」
「は?ここのスペアキーなんか学校のほとんどのやつは持ってるだろ」
「え?」
俺は今間抜けな顔をしてるだろう。俺が頑張って、鍵を管理しているところに忍び込んで作った屋上のスペアキーを何で学校のやつらが…っていやいや。今のは秘密だけどね!
「誰かが作り出したスペアキーをそいつの友達がコピーして、またその友達がコピーして、またその友達が…っていうネズミ商法みたいな感じで広まったらしいぜ」
「…」
なにそれ知らない!そんな話回ってきたこともないんだけど!
「この話回ってこなかったか?俺この話何回も聞いたんだがな」
だから知らないよ!だって俺そんな親しい友達っていや新羅とドタチンくらいしか…っていやいやいや!
「いろんな奴からスペアキー、コピーしようか?って聞かれたな。俺もう持ってんのにな」
「へえ…ふーん…そうなんだ…」
曖昧に相づちを打つしかなかった。いろんな奴から聞かれたな、って俺聞かれなかったし。だから自分で作っちゃったし。え、もしかして俺って可哀想なやつ?学校全体からハブられてんの?俺って。
ドタチンは俺が悶々と悩んでいるのにも気づかず、寝っ転がった。あ、そこ俺の特等席なんだけど。ドタチンを見るともう寝ている。まあこの陽気だし仕方ないか、と俺も隣に寝そべった。
そのとき、カンカンカンと屋上に続く螺旋階段をかけ上がってくる足音がした。誰だろう、とパッと起き上がったのと同時にまたもや扉がバンッと音をたてて開いた。
「あれ、新羅じゃないか」
息をはずませながらやってきたのは新羅で、膝に手をつきながらぜーはーと肩で大きく息をしていた。
ていうかほんとに誰でもスペアキー持ってるのか…さっきまでのスペアキーは俺しか持ってないっていう優越感を返してほしいよ…少しだけショックを受けながら新羅に話しかけた。
「どうしたの、そんな全速力で走ってきてさ」
新羅は息を落ち着かせながら答えた。
「さっきまで静雄といたんだけど、前に静雄に喧嘩売って返り討ちにあったやつらがいるだろ?そいつらがまた喧嘩をしかけてきてさ。巻き込まれる前に逃げてきたってわけ」
「前に静雄に絡んだ奴らって西高の奴らか?」
ドタチンも起き上がって新羅に聞く。すると新羅はんー、と首を傾けながら言った。
「多分ね」
「曖昧だねえ」
「だって静雄って毎日喧嘩売られてるじゃないか。そんなの誰が喧嘩売ったかなんて覚えてないよ。だけど多分あれは西高じゃないかな」
「ふーん」
災難だねえと言うと、新羅に臨也絶対そんなこと思ってないだろと言われた。
失礼な。まあ不幸だとは思うよ?暴力とか喧嘩とか嫌いなのに力のせいで毎日喧嘩は売られるし、友達もいないしー…って絶対静ちゃんは屋上のスペアキー持ってない!ていうか友達のいない静ちゃんが持ってるはずがない!
まだ根にもってたのかって言われても構わないさ!これでまた静ちゃんをいじめてやろう。何て言ってやろう、「友達のいない静ちゃんはもちろんスペアキーなんか持ってないよね」とでも言ってやろうか。
思わずにやける顔を見てドタチンはため息をつきながら言った。
「おい、何考えてるか知らないが静雄のこといじめてやんなよ」
「あれ、なんで分かったの?」
すると新羅もため息をつきながら言う。
「君がそんな笑い方するときって絶対静雄絡みじゃないか」
あはは、それって誉め言葉?
それでも空は青く
お前も友達いないだろって?
はは、黙れ。
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臨也が静ちゃんをからかいにいったときの文を拍手文にするかも。