歪んだ笑顔が合図の後日談的な。余談でございます






「しーずちゃんっ」

俺は喧嘩し終わった後の静ちゃんに声をかける。一通り喧嘩し終わった後の静ちゃんは比較的安全だ。なんというか暴力を発散し終わった後、みたいな。

そこでからかってやるわけ。
俺はニヤニヤしながら屋上のスペアキーを取り出す。

「静ちゃんさあ、屋上のスペアキー持ってないでしょ?」

「あ?」

持ってない、ということを仮定しての台詞。だって静ちゃんがそんな学校のサイクルにちゃんと乗れてるわけ、

「屋上のスペアキーだろ?持ってるぜ」

は?今なんて?

「ていうか屋上のスペアキーなんて今どき来神のやつらならみんな持ってるだろ」

昼休みにドタチンが言ったことと同じようなことを言う静ちゃん。

えーとこれはどういうことだろう。

あの静ちゃんですら持ってるってことは学校のみんなが持ってるってことに等しい。なのに俺はそんなこと知らなかったし、聞かなかったし、聞かれもしなかった。あ、言ってて悲しくなってきた。

「お前持ってねえのかよ」

別に馬鹿にしてるわけでも、哀れんでるわけでもない静ちゃんの言葉がぐっさり胸に突き刺さる。

「べ、別に持ってるからいいけどね!なくて困ってるわけじゃないしさ!」

「なんだ、なくしたのなら早く言え」

どうやら静ちゃんは普段俺が嘘を言いまくっているので、なくて困ってるわけじゃない、という言葉をないから困ってると受け取ったらしい。

そして静ちゃんは俺に屋上のスペアキーを放り投げた。「使わねえからやるよ」と言って。

…静ちゃんがこんなことするから俺かなり嫌な奴じゃないか。

今頃気づいたのかよ、と誰かにつっこんでほしかったけど生憎俺の周りには誰もいなかった。








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