(微パロディ) ※エリオットとギルの立場が逆だったなら * オレの従者は騒々しいのが嫌いだ。でも大体一番騒々しいのはエリオット。と、前我慢出来なくて言ってしまえば思いきり殴られたわけだが。 けれど朝にも関わらずぎゃあぎゃあと廊下の向こう側からエリオットが騒いでいる声を聞いたら思わずにはいられない。うるさいのは絶対オレじゃなくおまえだ、と。 「うるさいよエリオット。」 開いたドアにため息混じりで告げる。すぐに『オズ!』と怒号が飛んでくるだろうと予想していたんだけど、返ってきたのは『坊っちゃん!』だった。 思わず『えっはい!』と敬語で返事をしてしまうくらいには驚いた。エリオットが坊っちゃ、ん? 「坊っちゃん、エリオットと…そ、そういう関係ってどういう関係ですか!?」 「…へ? って、ギル?」 その疑問は慌てたように駆け込んできたギルにより解決されたが、そういう関係って…何言ってるんだこいつ。オレは断固としてエリオットとうふふあははとか、そんなのじゃない。昨日ブレイクに散々からかわれたからもう懲り懲りだ。 眉を寄せ何と答えようか迷っていると遅れて顔を覗かせたエリオットも同じ表情をしていた。前と同様ソファに座るオレに前のめりで詰め寄ってきているギルの襟を掴み引っ張る姿からは少し苛立ちを感じる。 「やめろって言ってるだろうが!」 「だって…!そんなのってあんまりです!」 エリオットにずるずると引かれながらもギルの円らな瞳はオレを射抜く。少し潤んだそれにドキッとしたのは庇護欲の類いだろうか。 わからず胸を押さえた前では兄弟喧嘩が再加熱していた。 「ぼ、僕は…坊っちゃんが大好きなのに…っいえ、だから傷つくと思って秘密にしてたんですか!?」 「秘密にしてねえって何回言えばわかるんだテメーは…!」 確かに秘密にはしていない。というかそういう事実がないのだ。 きっと今日も昨日と同じく遊びに来てくれたギルをブレイクかシャロンちゃん辺りがからかってそのまま信じ込んでいるといった感じだろう。純粋なのはギルの良いところだがこうなると考えものだ。 …そんなギルが嘘をつくはずがない、とはオレもわかっているけど…。 「…オレのこと、ほんとに好き…なの?」 嘘をつかないと思ってる。でも、それはやっぱり信じられない。男同士だし、何よりオレは自分にあまり自信がないから。オレはオレを好きではない。だからオレを好きと言ってくれるその感情がわからない、測る物差しを持っていない。 「好きだって信じてくれないんですか…?」 「う…っ、だ、だってオレ男、だし!」 「男だとか女だとか関係ありません。僕は坊っちゃんが好きなんです。」 な、んで可愛い顔して男前っ?かあっと頬に血が上る音を聞いた。 真摯な視線に見つめられ落ち着かない。こんなオレでもいいのだろうか。ギルは満足出来るの? もしいいと言ってくれるなら、少し、揺らぐ。いいかなと思ってしまう。 『オレは…、』と口を開きかけたところでしかし邪魔をしたのは今まで仏頂面をして話を聞いていたエリオットだった。掴んでいるギルの襟を外せば子猫のようにぼとりと床に沈む小柄な身体。い、痛そう…。 「ギルバート、おまえ訊いたよな?」 「…何をです、か?」 「オレとオズはどういう関係かって。」 落とされたのに文句の一つも言わないなんてギルは健気な子だ。そんなことを頭の片隅で考え、カツカツと鋭い足音を鳴らし眼前までやって来たエリオットを見上げた。 ただならぬ雰囲気に『エリオッ、ト?』と呟けば表情とは違い存外優しい動作で指を絡められる。そうして繋いだ片手を引かれると簡単に浮く腰。立ち上がりきる前に自由なもう一方の手がオレの腰を抱き寄せた。ぐっと、それは躊躇いもなく。 「見せてやるからしっかり目と脳に焼き付けて帰れ、もうオズにちょっかい出しに来るな。」 「ちょっエリ、…!」 「な…っ!?」 隙間なく抱き締められ、跳ね出した心臓に合わせ熱くなる顔に影が掛かる。 何なんだ今日は。何なんだこれは。 エリオットの向こう側で目を真ん丸にしているギルが見えたがオレもきっとあんな表情をしているに違いない。 唇を柔らかいもので塞がれ息が上手く出来ない。苦しさに『ん、』と漏れた泣き言はエリオットの手をピクリと反応させただけ。 というか、な、なんでキスされてるんでしょうかオレ! 「はっ、ぁ…。」 長い、と思ったのに解放され息を切らしているのはオレのみ。なに食わぬ顔をしてぎゅうと、ヘロヘロになっているオレを抱き締めたエリオットは高らかに鼻を鳴らした。なんて得意気な音。 「わかったか?わかったなら邪魔者は帰るんだな。」 完全に勝ち誇った悪い表情で口角を上げるエリオット。俯いてぷるぷると震えているギルも可哀想だが生憎オレはこの状況に思考回路が爆発中だ、助けてあげられない。 邪魔者って…いやいやそれ以前にキスし、たよこの従者!わけがわからない!対抗意識か!? 「…ません…。」 「聞こえねえよ。」 「っ、信じません!僕はぜーったいに信じません!さっき違う違うって何回も言ってました!」 「は、あ!? 今まで否定しても信じなかっただろうが!」 「それはそれ、これはこれです!」 この答えはエリオットも予想外だったのだろうか。近寄ってきたギルは茫然としている義兄の手からするりとオレを奪い取って、って、え、これまさか…。 「僕も坊っちゃんが好きだから諦めません。」 「ギ、」 ぷちゅりと柔らかいものが押しあてられる。自分より年下で可愛くて華奢で背も低い男にキスされるオレって一体…。 というか、なんで二回も唇奪われてるの!? ラムネの目覚め (ぼ、僕も…って…)(エリオットも坊っちゃんが好き、)(好きじゃねえよ!) * じゃあなんでキスしたんだおまえってエリオットはオズに踏み踏みされてたらいいと思います^∀^ 勝手にパロに変えてしまい申し訳ありません…!少しでも楽しんでいただければ嬉しいです! 書き直し希望はお気軽にどうぞ><、 リクありがとうございました! 11.01.14 |