エリオズ2 | ナノ


(微パロディ)

※エリオットとギルの立場が逆だったなら

*

夕食も終わりお風呂も終わり、すっかりのほほんタイムに入った夜。エリオットが作ってきてくれたホットココアを飲みながらちらりと顔を窺えばもう機嫌は直ったのか部屋にあるテーブルセットの向かいに座っている彼は『どうした?』と優しめに尋ねてくれる。
ここで話題を掘り返し、無闇にまた機嫌を急降下させるのはあまりよろしくない。でも気にな、る。
結局やんわり訊いてみるか、と無難な結論を出してマグカップをコトリと机に置いた。



「エリオット。」

「ん?」

「今さあ、例えばオレがいきなり抱き着いたら怒る?」

「…はあ?」



素っ頓狂な声とはこういうものを指すのだろう。眉尻を上げたエリオットはぱちくりと瞬きを落とし、オレと同じようにマグカップを机に置く。まだ飲みかけのそれからは湯気がほんのりと浮かび上がっていた。



「…いや、べつに…怒りはしねえけど…。」



『気持ち悪いとは思うが。』と後付けされた言葉はまるっと捨ててしまおうか。どうやら機嫌は本当に直ったらしい。
ふぅん、とだけ呟き試しにソファへと移ってみた。そうして見つめてきているエリオットに両手を突き出す。長年の付き合いで察してくれるであろうことは理解済みだ。
現に眉を潜めたエリオットは『本気かよ…。』と嘆息しているし。



「早く早く。」

「ああもう、わかったから。」

「エリオットー。」

「はいはい。」



緩慢に立ち上がったエリオットがゆっくりとオレの方に移動してくる。そのまま両手の間…つまり胸の中へと飛び込んでくるような形で要望を叶えてくれた身体をそっと抱き締めた。
昔は小さかったはずのそれは今じゃガッシリと逞しい。その上さりげなく体重が掛からないようオレの顔を挟み肘をついてくれてる辺りとか、なんかもう…大きくなったんだなあと感慨深いというか。
至近距離にある空色をじっと見上げそんなことをつらつら考えていたらコツンと軽く頭突きをされた。



「熱でもあるのか?」

「違うよ…ほら、ちょっとエリオット機嫌悪かっただろ。」

「ああ、」



怒るか?と微妙に不安になりつつも話題を振れば存外エリオットは普通の反応を見せた。昼間とのこの差は何なのだろう、ますますわからない。
エリオット?と小さく首を傾げ答えを促す。



「…おまえがあいつと…騒いでたから。うるさかっただけだ。」

「…前から思ってたんだけど、エリオットってギルのこと嫌いなの?」

「べつに嫌いとか仲悪いとか、オズが思ってるような殺伐としたものではないぞ?」



エリオットの片手がくしゃりとオレの前髪を掻き上げた。そのままゆるゆる頭を撫でる手のひらは本当に撫でているのか髪をくしゃくしゃにしたいだけなのかどっちなのだろう。
まあ気持ちいいからいっかと適当な答えを出し、これもオレの影響なのかなと10年前事あるごとに頭を撫でていたことをふっと思い出た。

二人の関係は殺伐としたものではない、らしい。確かに喧嘩しつつも何だかんだエリオットとギルの仲が良さそうなのは見ていて明らかだったし。嫌いでもない、と。ならどうして?
スタート地点に戻ってきた疑問は堂々巡りを開始しそうな雰囲気を漂わす。



「逆に訊くが…おまえはどうなんだよ。」

「? 何が?」

「ギルバートのこと、どうなんだ。」

「どう、って…。」



どうとは何か。質問の意図が見えず口ごもってもエリオットは話すつもりはないのか沈黙。
結局迷いながらストレートに、そのまんまな答えを出した。



「好きか嫌いかなら好きだけど…。可愛いし、好かれて嫌な気分にはならないだろ?」

「…へえ。」

「……。」



自分から訊いたくせに!何故かわずかに降下した風なエリオットの機嫌に思わずため息をつきたくなった。何なの、反抗期か何かかなこの子は。お兄ちゃん困っちゃいますよ!
…虚しいからやめよう。

一人脳内演劇を繰り広げていると不意にずっと動いていたエリオットの手が止まった。真剣な眼差しに晒され、額をすっとなぞられれば妙な空気になる。それこそ言葉を発せないような。



「…エリ、オット?」

「……。」

「どうしたの…?」

「…オズ、」



何だろうこの感じ。無意識に目を逸らしてしまった先にあったのはドア。それがパァン!と突然開くなんてオレには想像も出来なかった。

えっ、と肩を跳ねさせたオレの目と、ドアを開けたらしいブレイクの目が合う。後ろにはシャロンちゃんも佇んでいたから何か用事でもあったのだろうか。
ブレイクもまたえ、と溢す。それきり無言、誰も話さない。

ちょ、え、…今何が起こって…。



「…っ!」



そんな中最初に動いたのはシャロンちゃんだった。バッと口を押さえ走り出す。



「お二人がそんな関係だったなんて…!」



声音がどこか嬉しそうだったのはオレの勘違いだ、よな?
自分たちの体勢を客観的に考えてみて、慌てて『ちっ、違う!』と叫んだ声は届いただろうか。自分から誘ったくせにエリオットを押し返すがそれでもブレイクの複雑な視線は痛かった。
ち、ちが、ほんと違うんだってば…!



*

エリオットのターンでした。全体のイメージとしては何となくエリオズ風味かな、で書いております…!

11.01.11

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