ギルオズ4 | ナノ


(現パロ)

*

ギルと近くにいれば心臓が変な早鐘を打ち出すし、かといって間を取れば何とも言えない恐怖が身体に巣食う。板挟み状態の感情に自然とオズの手のひらには力が篭り、隣を歩くギルが彼の方を向いた。
今は離れろと命じたオズに従い二人の間にはわずかな隙間がある。文句を言いながらもそれに従ってくれるギルは優しいのだろう。そこまで考えてドクン、とオズの中でまた細波。



「…オズ?」

「なに。」

「いや、調子でも悪いのか…?」



光がほとんどない状態でもギルの瞳だけはちゃんと見える。暗い中にある金色は本当に月のようで綺麗だなとぼんやり感じた。いつの間にか止まってしまった足にギルとの距離が少し近くなる。遠くからは悲鳴が聞こえていた。
前なのか後ろなのかわからないそれと同じように叫ぶことはオズもギルも何とか踏み止まってはいるが。
そんなだから油断していたのかもしれない。ぺた、と頬に触れてきたギルの手にどうしていいかわからず見上げるしか出来なかったオズを突如仕掛けが襲った。正直なんでこのタイミングで、と思わずにはいられない。



「ぎゃあっ!」

「っオズ!?」



向かい合わせだったギルの胸にガバリと抱き着きその大きな背中に手を回したところでオズが固まる。自分の過剰反応を見られたのも恥ずかしいけれど、それ以上にこの体勢。顔が上げられず固い胸に思いきり埋まりオズの脳内ではどうしようどうしよう、とそれだけが渦巻きだした。
ギルは一言も喋らない。何か話せよ!とオズが思う時にはいつもこれで、少しは空気を読んでくれてもいいのではないか。ギルの役立たずめ、と酷い八つ当たりをするオズが意を決してわずかに顔を上げる。



「…え、ギル…?」

「っ、あ、なんだ!?」

「…なんでそんな、顔真っ赤…。」



けれどそこにあったのは予想外の赤い頬。茫然と呟いたオズの前でギルがあせあせと視線を泳がせ出した。
これではまるで照れているみたいじゃないか。そんな反応をされるとこっちまで困る。口をぱくぱくと動かすオズにギルの眉が寄った。



「お、おまえだって顔真っ赤だ!」

「なっ、そんなことない!」

「耳まで赤い、」

「っ、もう見るな!」



耳まで赤いとか恥ずかしすぎる。慌てて抱き着いていた手を離し耳を隠したオズはぐっとギルを睨み上げた。闇の中で翡翠の虹彩が羞恥の涙で煌めく様に見せられる。思わず詰まるギルの息。

昔から可愛いと思っていた。幼馴染み、しかも同性の男にこう思われているとオズが知れば気持ち悪がるか烈火の如く噴火するかのどちらかだろうがギルの中ではオズが一番可愛い。そんな彼はギルに対してだけなかなかに不遜な性格だからぽろっと溢すようなドジな真似は避けてこられた。
だが今目の前で網膜に映る光景は。小さい頃からお化け屋敷なんて怖がらない子供だったのに悲鳴を上げて抱き着いてきて、バレバレの照れ隠し。オプションみたいに上目遣いまでついている。
だから言ってしまった、やってしまった。長年ギルの中で燻っていた気持ちがつい緩んだのだ。



「…可愛い…。」

「はっ?」



オズが自分から手を離した代わりのように華奢な身体を抱きすくめたギルがその白い首筋に顔を埋める。シャンプーの爽やかな匂いに混じって甘い香りも鼻腔を満たし胸も高鳴る。
真っ暗闇の中もっと、とでも言うようギルがオズを押し付けた。翠玉が更に潤む。



「や、やだ…ギル何して…。」



わずかに身動ぐ抵抗は反対にギルの何かを溶かしていく。それが理性だったのだ、と気づくのはまだまだ後。止まらない衝動のままオズの顎に指を掛ける。くいっと上を向かせれば桜色をした唇が目に入った。
欲しい。そう思ったのは最早本能かもしれない。戸惑いがちに瞬きを繰り返すオズの珍しすぎる弱々しい態度にも視界はチカチカ点滅する。
大分ある身長差にギルが腰を屈めた。一気に近くなる距離にオズの吐息がギルの前髪を揺らす。



「や…ギル、やだ…っ。」



何をされるか頭は理解していても身体と感情がついてきていないらしい。オズのふるふる、と首を振るだけの拒否に今さらギルが止まるはずもなく距離を詰める。
お互いの鼻頭が当たった。オズの瞳が目の前で揺らめく。



「だ…め……。」



か細く言葉を紡ぐ唇を、自分のものでギルが塞ぐ。

前に事は転がった。



「っ、や、や、やめろっつってんだろ!目ぇ覚ませこのバカギル!!」

「い…っ!?」



バッチーン、とこんなにいい音が鳴るのかというくらい派手な音を響かせオズの手のひらがギルの頬を打つ。目玉が飛び出すかと思った。本当に痛い。グーじゃなかっただけマシだ、とどこかから聞こえる気がしないでもないが真剣に痛い頬をギルは慌てて押さえる。
そんな彼を続けてオズの蹴りが襲った。思わずよろけ尻餅をついたギルの前ではビンタをかました体勢のままオズが真っ赤な顔を晒して立っている。下から眺めるオズというのも少し新鮮でいい。



「ば、ばか!この大ばか!欲求不満解消なら別のところでしろ!」

「ちが…っ違うんだオズ!」

「キス…キスしようとした…!信じられないっ、意味わかんない!」



変態!と最後にグサリと胸に刺さる言葉を言い残しオズはペンライトを投げつけ走っていってしまう。しっかりとそれを額で受け止めたギルは痛むおでこを苦悶の表情で押さえた。
それにしても違うんだ、と咄嗟に否定はしたが。じゃあ一体自分はどういう気持ちであんなことをしたのだろう。間近で戸惑うオズの様子を思い出しギルの心臓が跳び跳ねる。あれはイイ表情だった。



「じゃなくて!オズ!おまっペンライト…!」



無しで大丈夫なのか、と焦って彼を追いかけるギルに近くで恐怖と羞恥の板挟みに立ち往生していたらしいオズはすぐに見つかった。そうして彼が下した命令は『五歩後ろをついてこい。破ったら殴る。』
それでも話してくれただけいい方だ。嬉々と頷いたギルがついでに怖いのかと訊いた質問に『映画見すぎただけっ!』と飛んできた返事も可愛くて。



「っ、全部漏れてるんだよ!なに、いきなり何なの…!? なんかに取り憑かれてるわけっ!?」



知らぬ間に口に出していたらしいギルに第二投で飛んできたのは混乱でどうしようもなくなったらしいオズの靴。次は頭で受けたそれにしゃがみ込んだギルが無意識にいきなりじゃなくて、と呟いた。
オズの双眸が開く。




(「なんか、その…オズが好きみたいなんだ、が」)



*

二人とも気づいてないだけで両思いだったら可愛い。
あまりにもお化け屋敷を活かせなかったのでリベンジした、い…!こんなものでごめんなさい、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです><、

リクありがとうございました!

10.11.24

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