ギルオズ4 | ナノ


(オズ視点)(女の子オズ)

*

ギルにアッカンベーをして廊下を走ってたオレが悪いんだろうなって思う。確かギルのベッドに猫を何匹か仕掛けてやって、それにいつもの如く『オズぅぅう!?』と怒ったギルが追い掛けてきて。パンドラの人は今日もやってる、と生暖かい笑みで見守ってきてくれるだけで、『ギルなんかに捕まんないもーん!』と悪戯っぽく笑って後ろを振り向いた瞬間だった。
ゴツン!と頭にかなり大きな衝撃とギルの『あっ!』って間抜けな声。すぐに痛いと思って尻餅をつく頃には人にぶつかっちゃったのかと理解する。明らかに悪いのは前方不注意で走り回ってたオレで、だから慌てて反射で閉じてた瞼を開けて声を上げた。



「すみませんっ大丈夫で、す…か……。」



そこにいたのは、ドッペルゲンガーだった。いや本気で。



*



「な、なんで?なんでなんでっ?」

「お、落ち着けオズ!とりあえず人って字を二人で三回書いて飲もう!なっ!?」

「これで落ち着けるわけないじゃん!ていうかギルも落ち着いてないし!」



オレが話す度にギルの私室に響くのはテノールの音程。まるで自分が話してるんじゃないみたいで正直気持ち悪い。しかも、目の前にはにこにことソファに座るオレが見えるんだから余計に。ブレイクが辛党になるくらいのおかしさだ。つまりあり得ない。

少し高くなった視界と距離感が掴めない手足。混乱しきってます!みたいにギルに抱き着けば『…その身体で抱き着かれると、なぁ…。』と微妙な返事が返ってきた。何もかもがいつもと違う。何故かと言うと。



「っ、なんでオレがヴィンセントと入れ替わってるわけ!?」

「オレに言われてもっ!」



そう、どうしてかオレはヴィンセントと身体が入れ替わってしまったから。
廊下でオレが勢いよくぶつかったのはヴィンセントだったのだ。そして多分、それが原因で身体が入れ替わっちゃった。

相変わらずにこにこと座っている、端から見たら正真正銘オレ以外の何者でもないあれはヴィンセントで、半泣きでギルに抱き着いている見た目的にはヴィンセントがオレというわけ。…ややこしい!ややこし過ぎる!
しかもヴィンセントとなんて、信じられない考えたくない。なんでよりによってヴィンセントなんだ。嫌な予感しかしないオレは間違ってない、絶対。
現に視界的壁を乗り越え、ひくつく表情でオレを撫でてくれてるギル――そりゃいい歳した弟に半泣きで抱き着かれたら誰でもこうなるだろう――に、ええ?と楽しげな声を漏らした。言っとくけどオレは全っ然楽しくなんかないからな!



「僕は嬉しいけどな、オズ君と入れ替われるなんて。」

「う、嬉しいってなんで…!」

「そりゃあ可愛い女の子と入れ替わるなんて全世界の男の夢でしょう?」



嘘だ。絶対嘘だ。女の子に、ていうかオレなんかに興味ないくせに――女の子に興味ない、は語弊があるかもしれないが――。自分で聞く地声と、他人に聞こえる自分の声というやつは違うとよく聞いたことがあったけど普段より少し高めに聞こえるそれは身体が入れ替わったからか、ヴィンセントのテンションの問題か。
クスクスと非常に機嫌が良さそうなヴィンセントはオレを見てギルを見て、やがて今自分が入っている身体…つまりオレの身体を見下ろした。そうしておもむろにネクタイを外す。ぽいっと投げ捨てられる鮮やかな赤がオレにはスローモーションに見えて、だからヴィンセントが躊躇いもなくワイシャツの胸元を引っ張って中を覗き込んだのに反応が遅れた。
ちなみにギルはオレの横で固まってる。



「へえ、オズ君ってスタイルいいんだ。」

「…あ、え……?」

「それに柔らかくて触り心地いいね。」



オレがオレの胸を揉みしだいてる光景なんて見る日が来るとは思ってなかった。『ふぅん…?』と楽しそうに手の中でふにりふにりと形を変える胸にヴィンセントが目を細める。
…えっ?ちょ、待って。触ってるのはオレの手だ。触られてるのもオレの胸。自分で自分の身体を触るのには何の問題もないよね、うん。

現実逃避をしたいのか頭がくらりと目眩を起こした。それでも淡々と、脳内では事実のピースが繋がっていくわけで。
…自分で触ってる、けど。中に入ってるのはヴィンセントだから、つまり、その…ヴィンセントに胸を揉まれて、るってこと?あんな眺められながら?
そこまで理解するとかあっと顔が一気に真っ赤になった。客観的に見たら気持ち悪いのは置いといて!



「やっやめて!セクハラ!えっち!」

「どうして?これは僕の身体でしょう?」

「ちが…っオレのだもん!」

「兄さんは触ったことある?ほら、」

「いやぁぁあ!やめてぇぇえ!!」



見せつけるみたいに胸元をちらりとギルに向かって開けたヴィンセントにオレが絶叫を上げて飛び掛かったのは言うまでもない。

ちなみに、ギルは鼻血を出してぶっ倒れた。『オレもまだ触ったことないのに…っ!』って恨みがましく床を叩いてたのは、視界から意識的にフレームアウトさせる。…オレの精神自己防衛だよ。



*

リクを見た瞬間に絶対これがしたい、と思いました私は変態^∀^

10.09.12

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