誕生日プレゼントに友人が買ってくれたのは、『Psychedelic Dreams』という音楽ソフト



の、はずだった。





「はじめまして!おれはサイケデリックドリームス、みんなはサイケってよぶよ。きみのなまえは?」





誕生日に手元に届いたのは、神様からのとんでもない試練……だったのかもしれない。








サイケデリックドリームス、通称サイケ。
パッケージは白にピンクの星が散りばめられているというシンプル且つキュート(笑)なものだった。が、なぜか私の目の前にいるサイケデリックドリームスはヒト型である。更に私個人としては、その彼の外見についてツッコミをいれたい。
これは……、まさかあの男、ソフトウェア開発にまで着手したのだろうか。それが転じてうっかり人の型をとった時同じ姿になってしまったのだろうか。そもそもこれはどういった現象なのだろうか。このサイケとやらには何の恨みもないが、アンインストールするべきか。今の僕には理解できない。
なんにせよ見るたびに頭が痛む彼の顔はなぜか、



池袋だけではなく恐らくどこで会っても関わってはいけないであろう人間、
折原臨也と瓜二つであったのだ。



それについて尋ねると、サイケは「イザくん?知ってるよ、イザくんねぇ、かっこいいよね!」ときらきら目を輝かせた。
これではっきりした、絶対これの開発にあの男が関わっていると。どこの世界にこんな無邪気にあの男を褒め称える人間がいるものか、これは間違いなく親鳥によるヒナの刷り込みだ。大体同じ顔でかっこいいよねとか言われても、ナルシストが無知で無垢な子供になんか言わせてら、としか言えない。

本物とはまた違った白いコート、ピンクのヘッドホン。無邪気に笑いながらサイケは鼻歌を歌う。彼が何か口ずさむたびに彼の周りできらきらと星が煌めくような気がするのはなぜだろう。



眉目秀麗、あれと同じ顔をしているから見た目的には文句のつけどころはない。かっこいいと思う、素直に。声もいいし、華奢だけどスタイルだっていい。

ただ、バカだった。

サイケはバカだった。
いやこう言っては失礼かもしれない、言い方を変えよう。頭の中に幼稚園の花壇を持つ男、それがこのサイケデリックドリームスだった。
音楽ソフトだからかもしれない、こちらの常識がまったく通用しない。それ以前にもう、なんというか、お花畑だった。いろいろとお花畑だった。



「サイケくん、それは何かな」
「さっきおさんぽしてたら、しらないおじさんにもらったの」
「何かな」
「んーぱんつ?」
「…………」
「なんかね、その場でぬい」
「今すぐポイしなさァァァい!!!!」
「わっ」

窓を開けて、白い手に握られていた青いチェックの布を奪い取り、ゴム手袋をはめた手で力一杯外に放り投げる。せっかくもらったのに、となぜか残念そうなサイケに、今度からは知らない人からものをもらってはいけませんとお説教。
こいついつか変質者に誘拐されていかがわしいことされるぞ……!顔は文句なしにいいし、しかもどこぞの誰かと違って警戒心もなければナイフやパルクールといった武器もない。むしろ話しかけてくれた人たちはみんなおともだち!とか言ってホイホイついていく。
これは私が身を以て彼を教育していかなければならないのだろうか、そうかこれが神の試練か……

「さくらちゃん?」
「サイケ……私がね、サイケのこと守ってあげるからね……」
「?うんっ!」

にこぉ、と恐らくモデルになったであろう人間の、あの悪どい笑みとは似ても似つかぬ微笑みを浮かべてサイケは頷いた。きゅん、と心臓が高鳴ったのは気のせい……ということにしておく。

「おれね、」
「なあにサイケ……」

これからのことを考え痛む頭にうなだれていると、サイケが後ろから抱きついてきた。きっとこれが普通なら「私イケメンに抱き締められてる……」と喜ぶところだろうが相手がこれではでかい子供に甘えられてるとしか思えない。

「おれが来たのがさくらちゃんの家でよかった!これからよろしくねっ」
「……はいはい」

ふんふんと甘えてくるサイケの黒髪を撫でる。これから始まる未知の生活に、大きな不安と少しの期待が胸をよぎった。















「ところで、みんなって言ってたけどサイケは量産されてるの?」
「?…………りょ……?」
「ごめんなさい、私が悪かったわ。みんなってだあれ?」
「あのね、つがるとか、リンダとか、あとみかてんくん!」
「(誰!!!?)」




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