つがるのことは、好き。やさしいし、いい子にしてたら頭を撫でてくれる。
リンダくんも、好き。たのしくて、いつもいっしょにゲームをしてくれる。
みかてんくんも好き。ちょこちょこおれのうしろをついて回って、鳥のひなみたいでかわいい。
ろっぴのことも、すきだよ。前はいじわるばっかりだったけど、今はおやつを作ってくれたり、遊んでくれたり、いろんなことを教えてくれる。



「咲良さんは?」
「ぶっ」

咲良ちゃんとろっぴとつがると三人でお茶会。リンダくんとみかてんくんは二人とも遊び疲れてお昼寝中。あーあ、ちゃんとゲーム機を片付けないと後でろっぴが怒るのに。
やだ何言ってるのろっぴこのばかばかおばか、と咲良ちゃんは真っ赤になっている。吹き出したお茶はつがるがさっさっと布巾で拭いていた。さすがつがる。
おれはぎゅうっとカップを握ってうつむいた。あつあつの緑茶に映るおれの顔。イザくんやろっぴとおんなじ顔。

「咲良さんは、好き?」
「すきだよ!でも」
「ん?」
「みんなとは……ちがうすき」
「……サイケぇ……」

俺がこう答えたら、咲良ちゃんは目を潤ませ、ろっぴはにやにや笑いながら「やっぱりお前、バカだなぁ」って言った。ひどい。おれはばかじゃない!……とおもう。
きゅ、と咲良ちゃんは俺の服を握る。恥ずかしそうに彼女は、「も、いい。この話終わりにしようよ……」と呟いた。かわいい。ちゅうしたい。
ちら、とつがるを見たら、なんかすっごい生やさしーい顔でおれたちを見ながら湯のみのお茶をすすっていた。なにその顔。おれ知ってんだからね、つがるが咲良ちゃんの妹とたまに会って仲良くしてるの!びみょうにらぶらぶっぽいにおいをサイケは感じたのであります!

「それは好きとは違うんだよ、サイケ」

人差し指を左右に振りながらろっぴは笑う。こうして見ると、ろっぴは本当にイザくんにそっくりだなあ。おれも同じ顔なのにぜんぜんちがう。なんでだろう。
まだ続くのかこの話題!咲良ちゃんはトマトみたいな顔で立ち上がり、寝室の方に逃げていった。あう、もっと咲良ちゃんといたかったのに。ぎゅうってしたかったなあ。
ろっぴはクスクス笑い声をあげながら咲良ちゃんを見送り、頬杖をつきながら俺に向き直った。イチゴの飴みたいな、赤い目がきらりと光る。

「それはね、『愛してる』っていうんだよ」

ぴ、と止まったろっぴの指を見つめる。あいしてる、あいしてる、それってなんだろう。そういえばイザくんも「俺は人間を愛してる!」って言ってたなあ。すきとあいしてるの違いはなんだろう。

「つがる、あいしてるってわかる?」
「いっぱいすきってことだ」
「そうなんだあ〜つがる頭いいっ」
「ああ……君もばかの仲間だったかつがちゃん……」

額を手で押さえてろっぴはうなだれる。具合わるいの?と聞いたら、お前らの頭の中を一度覗いてみたいよって言われた。覗いてみればいいのに。プログラム開いてみればすぐわかるよ?首を傾げてみたら、ろっぴはもう何も言ってさえくれなくなった。また怒らせちゃったのかな。

「サイケ」
「ん」
「咲良さん追っかけて、『愛してる』って言ってあげなよ。喜ぶよ」
「喜ぶ……ほんと?咲良ちゃん喜ぶ?うれしくなる?」
「うん、なる。絶対に。それにね、きっと咲良さんにとってこの言葉は、サイケだけに言われたいしあわせの呪文なんだ」
「おれ……だけ?」
「そう。サイケだけ」

彼の言葉に、じゃあいく!と俺は立ち上がって咲良ちゃんをおいかけた。寝室のドアをそぉっと開けると、床に敷いたおふとんにリンダくんとみかてんくんが寝ていて、ベッドの上にはこんもりやまになったもぞもぞ動くタオルケット。
音をさせないようにベッドに上がって、ゆっくりとおれはそれを剥いだ。さっき見た、目を潤ませた真っ赤な顔の咲良ちゃんが、泣きそうな声で「なんで来るのよう」と言ってきた。

咲良ちゃん、かなしいのかな。だから泣きそうなのかな。でもね安心して!咲良ちゃんが絶対喜ぶ言葉を、ろっぴが教えてくれたよ。だから元気だしてね。
ちゅ、と目もとにキスをする。咲良ちゃんの涙は、ほんのりしょっぱいしおの味。おれたちとはちょっとちがう味。

「咲良ちゃん、咲良ちゃん」
「な、なあに……」
「愛してる!」
「!!」

咲良ちゃんはびっくりして大きく目を開いた。あーあ、そんなに大きく開いたら、咲良ちゃんのお目めが落ちちゃうよ。だぁめ、と目を閉じさせると、咲良ちゃんはその手をとってつんと唇を尖らせた。
あれ、あんまりうれしくなさそう……?ろっぴ、おれに嘘ついたの?後で文句言ってやろ、って。

思ったら咲良ちゃんが勢いよく抱きついてきた。

勢い余ってぼすんとベッドに倒れ込む。咲良ちゃんは俺の胸の辺りに顔をグリグリと押し付けていて、どんな表情をしているのかはわからない。とりあえずいつもつがるや咲良ちゃんがしてくれるみたいに頭を撫でてあげたら、彼女はか細い声で「ばか」と言った。

え、おれ、ばか

「ばか、サイケ。私もよ」
「う?」

今のは聞き間違い?相変わらず彼女は俺の胸に顔をうずめたまま。
だけど、でも、

「…………」
「ね、咲良ちゃん。いまの、ほんとう?」
「私、うそはきらい」
「うん、知ってる」
「…………」
「…………」

やっぱり咲良ちゃんは顔を上げない。でも胸にくっつけた顔がものすごくあつい。ああ、なんだ、そっか。



咲良ちゃんずっと、照れてたの。



「咲良ちゃんかわいい」
「黙れ……」
「かぁわ〜い〜い〜☆」
「黙れェ!!」



ぼすん、と顔に押し付けられたふかふかの枕。ああ、はずかしがりやでかわいいかわいいぼくのこいびと!

君のために僕はこれからも、ずーっとしあわせを作り続けてあげますです!















(で、だ。みかてんよ…………、俺たちはいつどのタイミングで起きたらいいと思う?)
(しっしっ知らないよ!僕だって早くこの部屋から出たいよ……!)




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