ばたばたと玄関から騒がしい足音が聞こえてくる。
ああ、俺のかわいいマスターが帰ってきた!と俺もわくわくしながらソファーの上で彼女を待った。
「たっだいまー!」
「おかえりなさいマスター」
「カイトー!」
セーラー服のまだ若いマスター。俺に抱きついて、しばらく離れなかった。よしよし、と頭を撫でるとぱっと離れて、おやつにしよう!とキッチンに。がぱ、と冷凍庫を開けてアイスを二つ持ってくると、片方バニラアイスを俺に渡してドカッとソファーに腰を下ろした。
「うまー」
「おいしーですねー」
「やっぱダッツは違うね!」
「この前マスターが作ったやつもなかなか」
「いやゲロマズだったよ。私も父さんも母さんも一口で吐いたもん」
カイトはアイスだったらなんでもいーんだね、とマスターは呆れ顔。いやいや俺はマスターが作るアイスだからおいしいと思ったんですよ。
だからペロッと一人で食べてしまった。マスターも、マスターの両親も俺を化け物を見るような目で見ていてちょっと悲しかった。
「マスター、今日はどんな歌を歌いましょうか。俺、ラブソングとか歌いたい気分です」
「あ、うん。でも先に宿題やってからね。テストも近いし」
勉強めんどくさあい、と拗ねた口ぶりで彼女は呟く。
でもちゃんと勉強はしないと。だってちゃんと勉強して成績も今のまま維持するって約束でマスターは俺を買ってもらったらしいから。成績が下がったら、またお母さんの『カイト禁止令』が出てしまう。
以前にも一度あったけど、その時のマスターのあの寂しそうな、悲しそうな顔といったら!
もうあんな失態は犯してはならぬと、マスターはテストのたびに気合いを入れ真面目に勉強している。いい傾向だわ、カイトには感謝しなくちゃとお母さんがこっそりほくそ笑んでいたのを俺は見た。(でも言わなかった)
「カイト、私がんばるからね!カイトも応援してて!」
「もちろんですマスター!がんばってください、俺応援してます!」
ひしっと抱き合って俺たちは互いを励ました。
大丈夫、別に少し歌う時間が減るだけだ。この前みたいにまったく歌わせてもらえなくなるわけじゃないんだから。そうならないように彼女も俺も、ほんの少しがまんする。
そうすればずっと、一緒。
「そうだカイト、数学はわかる?」
「数学ですか?それならなんとかわかります。理科とか社会は無理ですけど」
「国語や英語は?」
「その辺はマスター次第で伸びるものなので」
「そか。私数学嫌いなんだ、わかんないとこあったら教えて!」
「はいはい」
わーいカイト大好きぃー、と甘えて膝に乗ってくる彼女。
ほら、早く宿題を終わらせて、テスト勉強も終わらせて、歌を歌いましょう。そう言うとマスターは元気に頷いて鞄を掴んだ。
俺のマスターはまだまだ幼い。だから俺がこうして見ていてあげなくちゃ。
かわいいマスター。大好きなマスター。
「カイトー、早速ここわかんない……」
「ここですか?ここはね……」
きみのために
僕はいつもそばに