ルカ姉がばっふばっふと小麦粉をふるいにかける。隣にはバターを計るミク姉の姿。箱から出したキャラメルをつまみ食いするリンを注意しながら、記事に混ぜ込む洋酒を舐めるメイコ姉。カイト兄はでっかい箱のアイスを、やっぱりつまみ食いしていて、ルカ姉が睨みつけたらしぶしぶスプーンを離した。

しょりしょり、じょり、とちょっと剥くたびに途切れるリンゴの皮。どうやったらマスターみたいにうまく剥けんのかな、と思いながら本日6枚目の絆創膏に手を伸ばした。
うまく皮が剥けなかったリンゴはでこぼこしていびつな形。むう、と眉を寄せるとルカ姉に頭を撫でられた。

「上手」
「でも、でこぼこだよ」
「まだ実が残ってるだけましだと思うわ」

ルカ姉はそう言っていびつなリンゴをとんとんと三角に切った。リンが楽しそうに、牛乳とミルクとバターを小麦粉の中に入れる。メイコ姉がここは自分が、とがっちゃがっちゃかき混ぜた。
ミク姉はキャラメルの包装を取って皿に。カイト兄はフライパンを温めている。俺はそんなみんなの姿を後ろから眺めていた。

マスターが最近お疲れ気味だから、自分たちでおやつを作ってあげよう!
と提案したのはミク姉。賛同した俺たちはこっそりとマスターの部屋に忍び込んで、お菓子の本を引っ張り出してきた。

マスターは甘いものが大好きだ。よく俺たちにもおやつを作ってくれる。たまに手伝いもしてるから、手順なんかもわかってるつもりだった。

でもやってみるとこれがなかなか難しい。材料は正確に計らなきゃだめなんだよーとマスターは言っていたけれど、その正確に、がまず難しかった。

何度も「こんなもんでどーよ!」とお前それ明らかに多いだろって量を突き出すリン。反対に生真面目すぎてmg単位で調整しようとするルカ姉。そんな二人を宥めつつつまみ食いをやめないカイト兄。


俺、超疲れた。


なんとか生地を焼くところまでこぎつけて、ここはミク姉に任せた。一番手慣れてるから。
俺はマグカップにリンゴとキャラメルを入れてレンジに突っ込む。これでおいしいリンゴとキャラメルのソースができる。んだそうだ。
マスターは生のリンゴは苦手だが火を通すと不思議と食べる。だからいつも、貰い物のリンゴが余ったら焼きリンゴにしたり煮リンゴにしたりジャムにしたり……して食べていた。たぶんこうすればマスターも喜んで食べてくれるだろうと思う。

「おぉっ!みんな見て見てー!」

ミク姉がうれしそうに俺たちを呼んだ。なんだなんだと顔を覗かせれば、ふっくらおいしそうに焼き上がったホットケーキ。
だらり、とよだれを垂らしてふらふらそれに近づこうとするリンを押さえ、皿に乗せたそれをテーブルに置いた。

丁度良く出来上がったキャラメルソースをかけてバニラアイスも乗せて、

ああ、マスター早く帰ってこないかなぁ








「ただい………甘っ!!この甘い匂いはなんだ!?」
「おかえりなさいマスター」
「ルカちゃんこの匂いはなんだべー」
「マスター、おやつ作ったんです!」
「ミク、まじで?」
「マジよ、ほらアレ」
「………カイトさんがお預けを食らった犬状態で見つめてるアレでしょうか、メイコさん」
「……あ、マスターおか」
「「おかえりなさーいマスター!!」」
「おぉ双子、ただいま。これこれ抱きつくな、かわいいのうかわいいのう」
「マスター俺は!?」
「………血走った目でケーキ見つめる図体のでかい男はかわいくないよカイト………」
「!?」




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