私の恋人はとても嫉妬深く独占欲の強い人ですので。





「昨日跳ね馬と何を話していたの」
「恭弥くんのこれからについて」

書類に目を通す彼がつまらなそうに尋ねてきたので、私もファイルをまとめながらただ一言だけそう答えた。僕のこれからってなに。どういうことなの。呟く恭弥くんはとても不満そうだった。
これからっていうのはつまり、君がイタリアに行ったり綱吉くんの部下になったり(あの恭弥くんが誰かの部下って笑っちゃう)マフィアになったり、まあお前も覚悟はしておいてくれ、とあの金髪の人はそう言っていた。覚悟もなにも。
彼と付き合い始める時には既に、普通に人生を終えることなど諦めていた。それがちょっと、グローバルになって更に血生臭くなっただけの話である。私としては何ら問題はない。

「ゆめこは、あの人をどう思ってるの」
「うさんくさい外国人」
「……そう思うなら、あの人の話に耳を貸すのやめなよ」

ため息をついた恭弥くんが立ち上がった。私の後ろに回り、持っていたファイルを取り上げる。それらをテーブルに捨て置くと、お腹に回した腕でぎゅっと締め付けてきた。
彼はわからないのだろうか。自分が普通の中学生よりも若干(というには強すぎる)力があるということ。つまりはとても、苦しいんだけど。

「ゆめこはわかってないんだ……あの人、君のこと狙ってる」
「は、まさか。っていうか恭弥くん。苦しいです」
「沢田も、獄寺も、山本も。六道も笹川も皆、皆だ」
「考え過ぎよ、恭弥くん」
「考え過ぎなんかじゃない!」

いきなり声を荒げた彼に目を瞠る。いつも冷静な彼がこんな風になるなんて珍しい。そんなに、私に彼らを近づけさせたくないのだろうか。

「恭弥くんは私から自由を奪いたいんだね」
「…………」
「自分は気ままに振る舞ってるくせに。ずるいよ」
「……違う、そうじゃない。そうじゃないよ、ゆめこ……」

苦しそうに呻いた彼が首筋に顔を埋める。熱い吐息が耳にかかってくすぐったかった。
普段は暴君のように振る舞うくせに、たまにこうして子供のような我が侭を言うのだから。まったく仕方がない子だ。
まあるい頭を撫でてやりながら天井を仰ぐ。突き放しても、甘えられればすぐにこうして許してしまうから、私のそういうところがいけないのかもしれない。でもそんな恭弥くんだからこそ、私も、好きだから。
白い手に自分のそれを重ねる。恭弥くんの手はひどく冷たかった。氷の様な指先だった。

「冷たいね」
「冷え性だからね」
「ふふ。かわいい」
「…………」
「今、むすっとしてるでしょ。見なくてもわかるよ。恭弥くんのことだもん」
「…………」
「かわいいね」

腕の中で身をよじり、彼の顔を見上げた。切れ長の瞳はそらされ、あちらを向いている。頬に差した赤みににんまり笑えば、小さい声で「かみころすよ」と言われた。望むところだ。





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