神様とはまこと不公平なものだと綱吉はため息をついた。
ベッドの上、今まさに起きんとしている自分に馬乗りになってにこにこ笑うこの少女。ふわっふわのくせ毛に大きなドングリ眼、自分によく似た顔立ちとぼよんと大いにふくらんだ胸。

彼女こそ、蝶よ花よと育てられた愛らしい我が従姉妹さまなのである。

「おはようお兄ちゃん!」
「うんおはよう春花どけて起きれない」
「うんっ」

ひらりと軽い動作で綱吉から下りた春花は、早く下りてきてね、とかわいらしい笑顔と勢いづいたハートを綱吉にぶつけて部屋を出ていった。
ゴツ、と額にぶつかったハートに目眩を覚えながらわしわしと頭をかく。

沢田綱吉14歳。自他共に認めるいとコン、である。





「早くっ早くっお兄ちゃん!遅刻しちゃうよ!」
「ま、待って春花!」

スニーカーの踵を合わせながら先を駆ける彼女を綱吉は追う。ひらりと翻るスカートの裾がやけに眩しい。ああ春花、中学生になったお前もいつかは彼氏とか作っちゃうのだろうか。作っちゃうんだろうなぁかわいいから……。
こっそり涙を飲んだ綱吉は、ちょっぴり重たいため息を再び吐き出した。



家からそう遠くはない場所にある中学。校門に向かうと生徒たちがずらっと並んで立っていた。春花は首を傾げる。が、綱吉はさあっと青くなった。

「お兄ちゃん、あれなあに?」
「風紀委員の持ち物チェックか服装チェックかもしくは両方?」
「ふうん」

でも別に違反なんてしてないし大丈夫だよね、と妹は笑った。まあ、確かに違反になりそうなものは持ってきていないし、服装だって今日はちゃんとしている。
雲雀とは何かといろいろある綱吉だったが、今日は何もないまま素通りしたい。っていうか従姉妹の前でフルボッコなんて御免被りたい。

「次。………」

春花の後ろに並んでいた綱吉は、春花を見て動きを止めた風紀委員を見て自らも固まった。よりによって雲雀だ。草壁でもなければ他の下っ端委員でもなく。委員長さまがそこに立っていた。

「ワオ……」
「?」
「沢田、君いつの間に性転換したの?しかも胸でかい」
「ヒバリサァァァァァン!!?」
委員長さまのけしからん発言に彼は驚き絶叫した。気づいた雲雀は、あれ、あれ、沢田がふたり……?とかなんとか言ってオロオロしている。
違いますそれ俺の従姉妹なんです胸凝視すんなこのヘンタイ!雲雀さんのヘンタイ!と春花を背後に庇い説明してやると、ようやく理解したのか雲雀は何度か頷き綱吉を引っぺがした。そして改めてまじまじと、春花を見やる。

「沢田妹」
「従姉妹です」
「………うん。好きだ付き合って」





未だ生徒が長蛇の列を成す中、ピンク色の春の嵐が並中を襲った。





「わたしお兄ちゃんよりかっこいい人じゃないと付き合いませんっ!」
「春花!?え、えぇと……」
「そんな……それじゃあ、僕なんか相手にならないじゃないか……!」
「オイしっかりしろ並中モテ男3本指!!」



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