▼ 神威とバトル
「かーむーいー」
「なーあーにー」
「わたしにーくれるものーなーいですかー?」
「なーいでーすよー」
胡散臭い笑顔を浮かべ、楽しげに歌って返答した神威に、わたしは「チョアーッ」と怒りの飛び蹴りをかました。が、悔しいことに神威はかろやかにステップを踏んでなんなくと躱した。
ドゴッ!と壁に穴が開いたが、わたしは気にしなかった。振り返って、ニコニコ笑顔の神威をキッと睨み付ける。
「今日は!ホワイトデーじゃん!な、ん、で!わたしにお返し返してくれないの!?」
「わー。チロルチョコを無理やり口に放り込んだだけなのによくそんなずうずうしいこと言えるねお前ー」
「チョコはチョコ!返して!お返し!お返しちょーだい!」
「面倒臭いから、やだ」
「な、ん、で、よう!!」
わたしは怒りのあまり地団駄を踏む。床に穴が開いていく。神威は平然とニコニコ笑顔のまま。
「神威のケチ!ケチケチドケチ!!」
「あー、もううるさいなあ。そんなにうるさいと、殺しちゃ「殺されないもーんだ!」
神威の笑顔にピシッと静かに亀裂が入る。どうやら決め台詞を邪魔されたのが気に食わなかったらしい。神威から静かな怒りが伝わってきた。
「…どうやらこれは、」
神威がゆっくりと戦闘態勢をとる。
「お灸をすえないとダメなよう、だね」
ゆっくりと、瞳が開かれて、綺麗な青色が姿を表す。
「…残念でした、神威」
わたしも戦闘態勢をととのえる。
血がざわめく。
興奮で垂れそうになる涎を舌なめずりして抑える。
「それ、最高のお返しだから!」
このあと、わたしと神威は船を半壊させかけて、阿武兎にたーっぷりと叱られたのでした。
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