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▼ 臆病者3Zパロ

※臆病者番外編
本編読んでいなくても読めます。
3Zパロ










「あ、あの、お、お、沖、沖田くん」

「なんでィ」

「そそそそそそのきょきょきょきょ」

「あ゛?」

「なんでもありまっせんんんんんんんん!!」

無理無理無理。沖田くんから教科書借りるとか絶対無理!無理ったら無理!!だってこの人怖いもん!!無理!!ああなんで私教科書忘れたのおおおおお!!

わたしは仕方なく教科書ない状態で授業に臨むことにした。はあ、とため息を吐いて頬杖をつきながら窓の外に目を遣る、

と。

がくんっと衝撃が机を揺らし、固定されていた肘がぐらつき、掌から顎が滑り落ちた。

なっ、なに…!?

気付くと、机が大移動をしていて、わたしの机は隣にくっつけられていた。

机と机の境界線に無造作に置かれる古典の教科書。

…え…?

沖田くんに視線をずらすと、沖田くんは頬杖をついてぷいとそっぽを向いていた。

教科書、見せてくれるって、コト…?

「あ、あの、お、沖田くん」

おずおずと沖田くんに話しかける。

「なんでィ」

ぶっきらぼうな返事が返ってくる。

ああ、沖田くんって。

「ありが、とう」

心の奥に、ひっそりと、不器用な優しさを持っているんだな。

わたしはぎこちなく笑って、沖田くんにお礼を述べた。

「…ヤキソバパン」

「へ」

「ヤキソバパンとジャンプとサンデーとマガジン。次の休み時間に買ってきなせェ。それで貸しはチャラにしてやらァ」

沖田くんは顔だけ動かして、にやりと、爽やかな顔に悪魔の笑みを浮かべた。

前言撤回。

この人、全然優しくない。


fin.


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